戦争が長引けば原油不足になる

伝統的な経済学者の間からは、石油価格を抑えるために多額の補助金を出し続けるのは「愚策」だという声が出ていた。もともと円安によって国内物価が上昇しているところに、補助金を出して政府の財政を悪化させれば、さらに円安が進んで、輸入価格が上昇しかねない。イタチごっこになるだけだ、という意見だった。

今回の場合、単に市場で価格が上昇しているだけでなく、ホルムズ海峡を通過できず石油自体が流れてこない深刻な「原油不足」が懸念されている。モノが足りなくなる懸念がある時に備蓄を放出して不足を補うのは意味があるが、価格を引き下げることを目的にするのは問題が多い。

価格が上昇すれば、消費者が節約するなど省エネに動くが、価格を引き下げてしまうと消費行動は従来と変わらない。戦争が長引けば原油不足になるリスクが顕在化しつつある中で、今重要なのは消費量をできるだけ減らす「省エネ」機運を盛り上げることだ。そのためには価格の上昇はある程度、放置し、市場に任せるべきなのだ。消費量が減って売れないとなれば石油元売り会社は価格を引き下げざるを得なくなる。それが市場原理というものだ。

車にガソリンを入れる人
写真=iStock.com/Tom Merton
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市場原理を機能不全にしている

ところが、日本政府がここ数年とり続けている政策は、補助金によって、この市場原理を機能不全にさせているとも言えるのだ。

1970年代のオイルショックの時は価格が大幅に上昇したことで、製造業を中心に企業は猛烈な「省エネ」に動き、それがその後の日本企業のコスト競争力の向上と、収益性アップに結びついたとされている。つまり、価格を意図的に抑えることが必ずしも良い結果をもたらさないのだ。

また、財政赤字が拡大すれば、円安が一段と加速しかねない。実際、ここへきて再びジリジリと円安となり1ドル=160円に接近している。衆議院を通過した2026年度一般会計予算は122.3兆円と過去最大規模の予算となった。高市首相が主張する「積極財政」が示された格好だが、これによって財政悪化懸念も再び頭をもたげている。

将来の経済成長につながる投資の呼び水として財政出動するものはまだ良いとして、防衛費などの大幅増加がどれだけ景気浮揚に結びつくのか分からない。また、巨額の予算を賄うために、ジワジワと増税が行われていくのも景気にマイナスになりかねない。