物価上昇でますます苦しくなる
一方で、株価や地価、宝飾貴金属などの値上がりが大きく、こうした財産を持つ人と持たない人の格差がどんどん広がっている。米国とイランの戦争が始まった後は、株価は乱高下しているものの、「先行き不安から売り一色」という展開にはならない。それは、世界で余ったお金が行き場を失い、少しでも安全な資産へと資金が集まることから、必ずしも成長を買うということではなく、株価水準が一定以上下がれば買いが入るという構造になっているからだ。
イラン戦争によって原油価格が上がることで、幅広い物価が押し上げられていくと見られる。そうなると名目賃金が上がっても、物価上昇に追いつかないという状況が再び起きてくる。資産を持たない層は物価上昇でますます苦しむということになりかねない。選挙戦で約束したはずの食料品の消費税率ゼロを2年間という話も、遅々として実現するメドすら見えない。生活に困窮する世帯が益々増えることになるだろう。
実質賃金プラスを維持するのは困難
過去最高を記録した企業収益にも暗雲が漂う。3月決算上場企業の2026年3月期は5年連続で最高益を更新する見込みだが、2027年3月期は楽観視できなくなった。仮に1バレル=140ドルという過去のピークを超えて原油高が進んだ場合、製造業のコストが大幅に増加する可能性が高い。
これまでは大企業を中心に、好業績を背景にして従業員の賃金を引き上げる動きが広がっていた。深刻さを増す人手不足もこれに拍車をかけていた。この賃上げムードに一気に水を差すことになりかねない。名目賃金が今年ほど上がらないということになれば、ますます実質賃金がプラスを維持するのは難しくなるだろう。
円安が輸出企業の収益にプラスに働く傾向があるのは事実だが、地政学的な不透明さは貿易量そのものを減少させる懸念がある。中国の景気減速も鮮明で、日本から中国への輸出増も見込み薄だ。米国向け輸出は引き続きトランプ関税問題があり、不安定な状態が続く。欧州はウクライナとロシアの戦争、中東での紛争の影響で、経済成長は鈍化しそうだ。
1月に国際通貨基金(IMF)が発表した世界経済見通しでは2026年は3.3%に対して2027年は3.2%という予想だったが、イラン戦争の余波もあり成長率が下方修正される可能性も出てきた。日本は2025年の1.1%から2026年は0.7%、2027年は0.6%と鈍化する予想だったが、この数字すら危ぶまれる。物価上昇に対して国民がさらに財布の紐を締めることになれば、消費も一気に悪化する可能性が出てくる。


