すべてのものを丸、三角、四角に
少し難しく聞こえるだろうか。簡単に言い換えよう。
セザンヌは、目に見えるものをそのまま描くことをやめた。代わりに、すべてのものを単純な形=丸、三角、四角に置き換えて描こうとしたのだ。
山は三角形に。
木々は円柱に。
建物は立方体に。
複雑に見える自然を、シンプルな幾何学の形に分解して、キャンバスの上で再構築したのだ。
なぜそんなことをしたのか。
セザンヌ以前、絵画の目標は「見たままを描くこと」だった。
いかに本物に近づけるか。いかに目の前の風景を正確に写し取るか。写真のようにリアルに描けることが、優れた画家の証だった。
セザンヌは、それに疑問を投げかけた。
見たままを描くだけなら、写真でいいではないか。
画家の目と頭を通して、自然を解釈し、再構成する。それこそが絵画にしかできないことではないか。
だからセザンヌは、山をカクカクに描いた。
木をカクカクに描いた。
空さえもカクカクに描いた。
セザンヌがピカソを目覚めさせた
現実とは違う。しかし、それでいい。画家のフィルターを通して世界を描き直すこと。それがセザンヌの革命だった。
現代の私たちからすれば、「現実と違うように描く」ことは当たり前に感じるかもしれない。抽象画も、デフォルメされたイラストも、日常的に目にしている。
しかし当時、それは異端だった。誰もやっていなかった。
だから「落書き」と笑われ、誰にも理解されなかった。
セザンヌは、その孤独な道を歩き続けた。
彼の死後、1人の若い画家がセザンヌの絵に衝撃を受けることになった。
パブロ・ピカソ。
ピカソはセザンヌの「すべてを幾何学に還元する」という考え方を受け継ぎ、さらに推し進めた。その結果生まれたのが、キュビズムである。
1つの対象を複数の角度から同時に描く、あの革命的な手法だ。
ピカソは言った。
「セザンヌは私たち全員の父だ」と。
落書きと罵られた画家が、20世紀美術の父となった。
この絵は、その歴史的転換点を物語っている。カクカクした山は、下手なのではない。美術史が変わる瞬間を、私たちに見せているのだ。




