見た目における「支配性」と「信頼性」
顔から受ける印象には、重要な次元があります。先ほどの選挙が第一印象で決まるという衝撃的な研究を発表したアレクサンダー・トドロフは、自身の著書『第一印象の科学』の中で、顔の印象を決定するのは、「支配性(dominance)」と「信頼性(trustworthiness)」だと語っています。
この2つは、動物世界から受け継いだ、生存のために強い個体が生き残るという次元と、社会を円滑にする次元という、まったく異なる性質を持ちます。支配性は強くて優位な個体を示す進化に関わり、信頼性は互いの信用で成り立つ複雑な人間社会を維持するために必要です。
トドロフらの研究が興味深いのは、「支配性」と「信頼性」それぞれで評価の高い顔と低い顔をコンピュータ・グラフィックスで作り出して見せてくれた点にあります。比べて見れば、第一印象の違いは一目瞭然です。
これらの顔は多くの実験参加者に評価してもらった顔を平均して作ったものですが、あらためて作られた顔を観察すると、支配性と信頼性には、年齢や男女、表情といったさまざまな要因が微妙に関わっていることがわかります。
支配性の高い顔は、男っぽくて大人のような顔です。一方の支配性の低い顔は、女っぽくて子どものような顔です(図表1)。また、信頼性の低い顔は怒ったような表情で、信頼性の高い顔は微笑みのような表情です(図表2)。
つまり支配性の印象は、男性的で年上と見られると上がり、一方の信頼性の印象は、表情を作るだけで変わるのです。いずれもちょっとした工夫で印象を操作できるようです。
信頼性の高い顔は「好ましい」
ここで、現代社会で必要とされる信頼性の判断がどれくらい重要かを調べた研究を紹介しましょう。
結論からいうと、信頼性の高い顔は、好ましいとして選ばれやすくなります。社会心理学に、掛け金をめぐって複数の実験参加者が互いに駆け引きする、信頼性ゲーム実験があります。この実験では、相手への信頼性に基づく協力行動を測るうえで、コンピュータ上の対戦相手の写真に、信頼性の高い顔と低い顔を貼ってみました。
すると信頼性が高い顔は、実際に信頼され、より高い投資がされました。金銭の貸し借りという状況を設定した社会心理の実験でも、信頼性の高い人はそうでない人よりも、低い利率でお金を借りることができたという結果があります。外見的な魅力よりも、信頼性が優先されたのです。


