死が訪れたときの状況
ここからは実際に死が訪れたときの様子についてお話ししていきます。こういう話が苦手な人は、読まずに飛ばしていただいてもいいでしょう。
チェーンストークス呼吸や下顎呼吸が出ていたとしても、「最後の一呼吸」は医療者であっても、わかりにくいものです。
病院などで心電図をつけている場合は、わりあいわかりやすいかもしれません。
また、心停止してもしばらくたってから心拍が再開したようにみえることもあります。ただ、これは電気的な波形が出ているだけで、蘇生するということはほぼないでしょう。また、時に尿や便の失禁が見られることもあります。
それと驚かれる人が多いのですが、体を動かしたときに声が出ることがあります。声と書きましたが、これは肺の中の空気が出るためです。ですので、呼吸や脈を確認しても戻ることはないものです。
耳は最後まで聞こえている
体の変化にもさまざまな変化がありますが、変わらないこともあります。
変わらないこと、それは「聴覚」です。
実は亡くなる直前まで耳はよく聞こえているといわれています。
私が看取りを担当した90歳代の女性です。施設で最期の時間を過ごしておられました。施設の介護士さんが15分前に来たときには呼吸をされていましたが、次に見たときには呼吸が止まっていたそうです。そこで介護士さんは大きな声でこう呼びかけたのです。
「○○さん‼ がんばってー‼ 長男さん、もうこっちに向かってるよー!!!」
すると患者さんの体がビクッと反応されたそうです。
ただ、「あ、呼吸が戻るかな」と思われたものの、そのまま呼吸は戻りませんでしたが……。
このように、呼吸が止まったあとでも反応があることもあります。なじみの方の声が聞こえておられたら、きっと心強いでしょうね。
「呼吸が止まった」と思って、「先生、すぐ来て」となるご家族の方は少なからずいらっしゃいます。しかし「呼吸が止まった」ときに、ゆっくりとお声がけしてあげていただけたらなと思っています。


