「やせているのに糖尿病」の落とし穴

「私はやせているから、糖尿病とは無縁だ」

和田秀樹『65歳からは戦略的ちょいデブ』(青春出版社)
和田秀樹『65歳からは戦略的ちょいデブ』(青春出版社)

そう思っているなら、少し注意が必要です。実は日本人の場合、太っていないのに糖尿病、あるいは予備軍である人が非常に多いのです。

欧米人の糖尿病は、その多くが肥満によってインスリンが効かなくなることが原因です。しかし、日本人は遺伝的にインスリンを分泌する能力が欧米人に比べて弱いため、それほど太っていなくても血糖値が上がりやすい傾向にあります。

ここで問題なのは、「やせているから大丈夫」と油断して、栄養不足のまま放置してしまうことです。

私がかつて勤務していた高齢者専門の浴風会病院におけるデータや、福岡県久山町の研究データを見ると、非常に興味深い事実が浮かび上がってきます。

それは、糖尿病の治療を厳格に行いすぎると、かえってアルツハイマー型認知症のリスクが高まる可能性があるというパラドックスです。

脳のエネルギー源はブドウ糖です。血糖値を薬で無理やり下げたり、食事を極端に制限してやせてしまったりすると、脳はガス欠を起こします。

「やせているのに糖尿病」の人がさらに食事制限をすると、脳も体も栄養失調になり、認知症やフレイルへと進んでしまいます。

ですから数値だけに囚われてはいけません。多少血糖値が高くても、しっかり食べて筋肉と脂肪を保っているほうが、脳も体も元気に保てることが多いのです。

脂肪は悪ではなく“備蓄エネルギー”

脂肪というと、どうしても「邪魔者」「万病の元」というイメージがつきまといます。お腹の肉をつまんでは、「これさえなければ」とため息をついている方もいるでしょう。

高齢になると、ちょっとした風邪や下痢、あるいは歯科治療などで、数日間まともに食事がとれない事態が起こり得ます。若いころならすぐ回復しますが、高齢者の場合、この絶食がきっかけで老化が一気に進んでしまうこともあります。

そんなとき、体に蓄えられた脂肪が生命維持のエネルギーとして使われます。つまり、脂肪は災害時に備えた非常食の役割を果たしているのです。

災害が起きてから食料を買いに走っても遅いように、病気になってから太ろうとしても間に合いません。平時のうちに、戦略的に少しだけ余分にエネルギーを蓄えておく。その余裕が、いざというときの生存率を分けるのです。

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