実験マウスは“砂糖入り”なら飲んでくれた
そのとき私は、カフェインが体内時計に与える影響を調べるために、マウスを用いた実験を考えていました。具体的には、カフェイン入りの水をマウスに与える。そして、活動の変化を観察するというものです。
ところが、実験の最初からつまずきました。カフェインは苦味があるので、マウスが飲みたがらなかったんですね。
「マウスがカフェイン水を飲んでくれなくて……」
私のぼやきに、研究仲間がぼそっとつぶやきました。
「砂糖を混ぜてみたら?」
なるほどなと思いました。たしかに私たち人間もコーヒーに砂糖を入れて飲んでいる。エナジードリンクには甘味がつけられている。そこで甘いカフェイン水をマウスに与えるという研究方法をとることにしました。砂糖、または人工甘味料で甘味をつけ、マウスに一定期間与えました。
するとどうでしょう。甘いカフェインを与えたマウスは体内時計が遅れ、夜行性だった行動が昼行性へと逆転していくという結果が表れました。(図表1)
「甘味のあるカフェインが体内時計の針を動かしたのではないか」ということです。ただし実験では、甘味によってマウスが飲むカフェイン水が増えたわけではありませんでした。飲みやすくはなったけれど、飲む量は変化しなかった。ですからカフェインと甘味が合わさったことでの作用とも考えられます。
「甘いカフェイン飲料」は昼夜逆転を引き起こす
そもそも私たちのグループではすでに、カフェインだけでも体内時計に影響があることを論文で発表していました。カフェインだけをマウスに与えても、1日の長さが延びました。
(Seira Narishige et al.(2014).Effects of caffeine on circadian phase,amplitude and period evaluated in cells in vitro and peripheral organs in vivo in PER2::LUCIFERASE mice.British Journal of Pharmacology,171,Issue24,5858-5869.)
そして、これに加え、甘味を合わせるとその効果が一気に強く現れるとわかったというのが、この研究でした。
この研究から得た「甘味のあるカフェイン入り飲料は昼夜逆転を引き起こすのではないか」という発表は、メディアやSNSなどで多くの方にとり上げていただきました。なんとなく「そうなのかもな」というイメージがみなさんの中にあったから、話題にしていただいたのかもしれません。
(Yu Tahara et al.(2024).Sweetened caffeine drinking revealed behavioral rhythm independent of the central circadian clock in male mice.npj Science of Food,8,51.)
これは体内時計への影響の例ですが、甘味料とカフェインを一緒に摂るときの注意は他にもあります。
砂糖などの甘味料はドーパミン神経を活性化させます。ドーパミンが快感や多幸感を与えることは本書でも触れました。甘味料も同じです。甘いものを摂ると幸せな気持ちになるのには理由があるのです。甘いものを欲することで、加糖コーヒーやエナジードリンクを飲む量が増えれば、結果的にカフェインの摂取量も増えます。さらに砂糖の場合、肥満や糖尿病などの生活習慣病のリスクも高まります。
もちろん「砂糖が絶対にNG」というわけではありません。むやみにたくさん飲むというのは避けたほうがいいという話です。いつも甘いカフェイン入り飲料を選ぶという方は気をつけてみてください。

