イラン発のエネルギーショックが長期化しても、欧州がロシアとのパイプを維持していたら、エネルギー価格の上昇をある程度は抑制できただろう。また日本が円高誘導に努めることができれば、エネルギー価格の上昇に伴う悪影響を軽減できる。しかし実際は、欧州はロシアとの関係を断ち切ったし、日本は円安の是正に慎重なままだ。
この話は、外部環境が劇的に変化した場合、それに対応できる余地をどう担保しておくかという戦術論でもある。様々な方向との間でバランスを取っていれば、一つの方向からショックを受けても、その悪影響を緩和することができる。そもそも貿易の多角化とは、そうした外生的なショックから身を守るためのバランス戦術だったわけだ。
それに外生的なエネルギーショックが生じたとき、通貨高に誘導できれば、その悪影響を緩和できる。ところが日本は、円安の是正には消極的である。政策運営の時間軸の違いはともかくとして、外部環境の変化に伴う悪影響の緩和に努めず、国民生活に強い負担を押し付けるという点においては、欧州と日本は同じ穴の狢だと言えよう。
円安放置が日本の“余地”を狭めている
さて以上は、イラン発のエネルギーショックが長期に及んだ場合に懸念される事項だ。基本的に、今回のエネルギーショックは短期で収束すると考えられるため、懸念は杞憂となろう。ただし、今後も外生的なエネルギーショックが生じるたび、エネルギーの純輸入国は同様の懸念に晒される。政策対応の余地は大きいに越したことはない。
一方、特定の方向に偏った経済運営に終始すれば、外生的なエネルギーショックに対して、それを和らげる適切な対応が取れない。今回のイラン発のエネルギーショックは、そうした当たり前のことを我々に思い返させる機会になったと言えよう。危機対応は迅速かつ大胆に行われるべきだが、そのためには十分な余白が無ければならない。
気がかりな点として、ハメネイ師の後継の体制が、イランという難しい国を適切に統治できるかということがある。言い換えれば、イランが中長期にわたって不安定化することで、中東発のエネルギーショックが蒸し返されるリスクがあるということだ。外生的なショックの緩和という観点から、経済運営の在り方が問い直されるべきである。
(寄稿はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です)

