対する日本だ。一部のエコノミストは、インフレに影響するのは円安よりも資源高だと説明する。確かに、輸入物価指数の変動を要因分解すると、為替よりも化石燃料価格の動きに左右される。とはいえ、輸入物価指数が金額規模の大きい化石燃料に左右されることは統計の作成法から言って当然で、円安の影響を軽視する理由にはならない。
それに、化石燃料、つまりエネルギーの価格は、少なくとも供給サイドに関しては日本がコントロールできない外生変数である。要するに、イランで発生したショックに基づくエネルギー高の悪影響を、日本が自らの手で和らげるには、通貨高に誘導してエネルギーの輸入価格の上昇を抑制する以外に、一義的な方法は存在しないのである。
悪影響は“円高”で抑制できるのに…
一方、通貨と物価の番人である日銀は、物価目標を達成してすでに3年以上が経過しているのに、利上げに慎重な姿勢を堅持する。政府もまた、高市首相のハト派志向が強いことで知られる。言い換えると、日本は円安を放置するマクロ経済運営を継続している。こうした状況では、エネルギー高の悪影響を円高で抑制することはできない。
それどころか、仮に世界的な高インフレの再燃を受けて欧米が利上げに回帰した場合、日本がスローな利上げに終始すれば、円安がさらに進むことになる。ただ、日本が欧米並みのテンポで利上げを進めたとしても、現在の1ドル160円前後の、1ユーロ185円前後の水準をどう守るかという、極めて厳しい現実が待っていると考えられる。
それでも、今の水準を維持できれば、エネルギー高の悪影響は増幅されない。しかし景気を優先する名目で利上げを回避し、円安を放置すれば、エネルギー高の悪影響が増幅されるため、結局のところ景気は悪くなる。それでも日本は、コストプッシュ型のインフレなのだから追加利上げは不要だとの論理に基づいて、円安を放置するのか。
外部環境の変化に脆弱なままでいいのか
欧州は経済安全保障の問題であり、日本はマクロ経済運営の問題であるため、同列で議論することは不適当だという意見もあるだろう。ポイントは、欧州も日本も、基本的にはエネルギーの純輸入国だということにある。外生的なエネルギーショックが生じたとき、それを抑制するための政策手段を持つ必要があるという点で共通している。


