試作を再び日本の「最強の武器」に
そして、これらをつなぐハブとして、大学の役割は決定的に重要である。大学は研究成果を生み出す場である以前に、産業の未来を担う人材を育てる社会装置である。理論と現場、技術と経営を往復できる人材を育てることなしに、フィジカルAI時代のものづくりは成立しない。特に、工学とMOTを架橋する教育機関には、現場の課題を抽象化し、再び現場に戻すという、本来の使命がある。
筆者自身、日本工業大学大学院でMOT教育に携わる立場として、この分野に強い使命感を抱いている。試作を担うものづくり中小企業が衰退すれば、日本の製造業は取り返しのつかない地点に入る。その現実を前に、大学としても、また一人の当事者としても、傍観者でいることはできない。フィジカルAIと製造DXを、現場の実装と人材育成に結びつける取り組みに、今後も継続的に関与していきたいと考えている。
フィジカルAIは、日本の強みを壊す技術ではない。むしろ、現場で試し、失敗し、そこから学び続けてきた日本のものづくりの力を、21世紀の技術によって再起動するための手段である。試作を再び日本の武器にし、ものづくり中小企業を次の時代の主役へと押し上げる。そのために、いまAIの力を使わなければならない理由は、これ以上なく明確だ。
この変革は、一朝一夕で完結するものではない。しかし、始めなければ何も変わらない。試作という現場から、日本の製造業を次の段階へと引き上げる。その覚悟と行動が、いま私たち一人ひとりに問われている。
(初公開日:2026年1月23日)

