不法移民を止めた代償
高校の授業を終えた長男マウリシオ(17)が店に顔を出した。従業員をレイオフしたため、マウリシオと長女(16)が放課後、店番を手伝っているのだ。ラウラの店にはぬいぐるみやアニメグッズが並ぶ。商品の4、5割は中国からの輸入品だ。仕入れ値が上がれば、輸入できず、売る物もなくなる。
ラウラは18年にこの店を開き、2軒目を別のショッピングモールに開いたばかりだった。「働いて、働いて、働いてきた。子どもたちに店を継がせようと思ったから。トランプがやっていることは、間違いだ。金持ちだけぷかぷかと浮かせて、私たちのような小さな店をつぶしている」24年の大統領選では、夫婦でトランプに投票した。
「不法移民は20~30人で裏庭に隠れていたり、川で濡れた服や靴のまま通りを走ったりする。どんな人か分からないから、怖かった。だから、不法移民を止めることに賛成だった」強制送還されるのは犯罪歴のある不法移民だけと信じていたが、犯歴がない移民まで送還されており、裏切られた気持ちだという。
「私の父は正しかった」ラウラの家族の中で、メキシコ生まれでジャーナリストの父親(64)だけは反トランプだった。16年大統領選にトランプが立候補したときから嫌っていた。「差別主義者で、嘘つきだ」と警告していた。「父には、ほら見たことか、と言われた。トランプは本性を出した。ああ、何度後悔しても、後悔しきれない」
「バイデンもトランプもダメ」
デルリオのミリタリーショップの主人、リック・マルティネス(45)はメキシコ系3世のトランプ支持者だ。「トランプは腰から撃つ(shoot from hip)型なんだ。カウボーイ用語で、構えて撃つ暇がないほどの緊急事態ってことさ。これだけの緊急事態だから、トランプみたいな奴がいいんだ。トランプは人を傷つけたり不快にさせたりするが、バイデンのように問題を起こしてしまうよりはいい」
そんなトランプ推しのリックですら、トランプの不法移民大量強制送還を「やり過ぎ」と批判した。「ビジネスはあがったりだ。トランプはこの国を殺そうとしている」就任式後の日曜日、市場がガラガラになった。ホテルの清掃員やレストランの調理師、ウェイトレスも、出勤してこない者がいた。拘束されることを怖がって家にこもっているのだ。
トランプはジーニー(ディズニー作品「アラジン」に登場する魔法のランプをこすると出てきて、願いを叶えてくれる魔人)だ、とリック。
「国境は電力も水も足りないから、移民が来すぎるとリソースが足りなくなる。民主党は問題に耳を塞いでいる。だから、俺たち国民はしかたなく、ジーニーに祈った。移民の流入を止めてくれ、って。そしたら、移民は止まったけど、そのほかのことも全部止めちゃったんだ」
「我々はこの国がだめになるのを見ている。いくら共和党が民主党に勝利しても、国として勝たなきゃ意味ないだろ?」



