「合法移民を増やす」のは歓迎
国境のアメリカ人が、共和党支持者、民主党支持者を問わず、全員が口にしたのが移民法の改正、とくに農業労働者のための労働ビザの導入だ。農業労働者の約3分の1は滞在資格がないとされている。
テキサス州イーグルパスの保安官トムはブラセロ(季節労働者)制度を復活させるべきだ、と言う。1942~64年、400万人を超えるメキシコ人がアメリカの農地で働いた。
イーグルパスの川岸の公園はブラセロ・センターだった。メキシコ人労働者はそこでワクチンを打ち、健康診断を受け、ID登録する。農家は政府と契約している。就職先が決まると、バスで各地に散らばっていく。収穫期が終わると、またバスで戻ってくる。給与と待遇が保障され、宿も用意されていた。
ちなみに、ブラセロ制度が廃止されたのは、違法に移民を雇い、安くこき使う雇用者がいたからだ。廃止後、政府は全米の高校生を募集して農作業をさせたが、この試みはすぐ頓挫した。高校生は食事や宿舎に不満を言い、農作業もメキシコ人のように十分にできなかった。
消防署長のマニュエルは、医療やホテル産業で働く人にもビザを出すべきだ、と言う。それに加え、難民認定やビザ審査関連の判事や職員を増やせ、とも主張する。
マニュエルは、アメリカ人女性がメキシコ人男性と結婚したのに、5年間も婚姻ビザをもらえなかった例がある、と言う。積み残しが溜まりすぎているからだ。パスポートが得られる都市も限られている。
現場の声を聞けば、予算をつけるべき分野、やるべきことは見えてくるのだ。予算をつけるところは、ICE(移民・税関捜査局)と軍ではないはずだ。
「アメリカを偉大な国に」は幻想に終わった
政治ショーは続く。
トランプは、国境地帯に軍隊を送り、強制送還作戦を本格化させる、と宣言し、ICEが全米各地で滞在資格がない移民の拘束を始めた。
さらに、トランプは2025年2月4日からメキシコとカナダからの輸入品に対して25%の関税をかけると宣言した(その後条件は二転三転している)。
「トランプに投票したことを後悔している。トランプはアメリカを偉大にするどころか、ダメにしている」
2月2日、イーグルパスの検問所から出てすぐの商店街でオモチャ屋を経営するラウラ・ラモス(37)はため息をついた。まだ大統領就任から半月も経っていない。
商店街の店の看板はスペイン語が多い。かかっている音楽もメキシコの楽曲だ。国境にかかる橋の近くにある雑貨店では、顧客の9割はメキシコ人だ。
すぐに客が激減した。週の売り上げは、3000〜5000ドルあったのが、400ドルに。土曜日は1日で1500ドル売り上げたのに、たった250ドルになった。「家賃も払えない。このままだと閉店せざるを得ない」
店の家賃が月2000ドル。500ドルの光熱費がかかる。自宅の家賃は1300ドル。トランプ就任以降、すでに数千ドルの損失が出た。

