アメリカで不法移民の強制送還が相次いでいる。毎日新聞記者の國枝すみれさんは「あまりに多くの不法移民が流入したため、アメリカ人ファーストを望む住民が増えた国境地帯では2024年の大統領選でトランプ支持が増えた。しかし、トランプの行き過ぎた移民排斥には現地から不満の声が上がり始めている」という――。(第2回)

※本稿は、國枝すみれ『アメリカ 崩壊の地をゆく』(毎日新聞出版)の一部を再編集したものです。

メキシコ系住民にとっても異質だった「新移民」

トランプは移民の大量流入を「犯罪者の国境侵略」と言い換え、選挙に利用した。有権者を脅えさせ、怒らせることが、一番簡単な勝利法だからだ。

一方で、バイデンの移民政策が失敗だったのも事実だ。2022、23年度だけで年に200万人を超える移民が南の国境から不法に入国したとして拘束された。

1日に数千人の移民が流れ込み、道路や公園でホームレス生活しているのを目撃して、心がざわつかない住民はいない。国境地帯に住む住民の多くはメキシコ人かその子孫で、米国ではマイノリティーだ。

しかし、新移民の多くは、メキシコ人ではなかった。さらに、数年前に主流だったグアテマラ、エルサルバドル、ホンジュラスなどメキシコ近隣国の出身ですらない。カリブ諸国のハイチやアフリカ諸国などからの移民はメキシコ人が話すスペイン語を話さない者もいる。黒人やイスラム教徒もいる。メキシコ系が圧倒的な国境地帯の住民にとっても、彼らは異質だったのだ。

アメリカとメキシコの国境にあるフェンス
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不法入国した移民がすぐに出頭するワケ

コロラド州オーロラ市にいるシンディ・ロメロの言葉を思い出す。「移民制度は壊れている。いくら金を注ぎ込んでもきりがない。亡命申請者の多くは認定されない。認定されることを夢見て渡米した移民も、彼らを支えるために税金を払うアメリカ人も、両方が苦しんでいる」

本国に戻ったら迫害され、生命の危険がある、などの厳しい要件をクリアしないと亡命は認められない。アメリカで稼ぎたい、より良い生活を送りたい、といった経済的理由では、「亡命者」にはなれない。

バイデン政権時、多くの移民が不法越境してから自ら出頭し、亡命申請した。すぐにメキシコに送還される場合もあるが、アメリカに親族などがいて、犯歴がなく、危険性が低いと判断されれば、保釈される。「国境を不法に越えてきた移民の8割は亡命申請する。それが一番、アメリカに残るチャンスがある、と分かっているからね。本当に亡命に該当するのは3割といったところか」。国境地帯の保安官が言う。

亡命申請制度は申請者の急増に認定を行う裁判所の人員が追いつかない。移民裁判所のやり残し事案数は23年度時点で約250万件に積み上がり、待機年数はどんどん延びている。それがさらに“経済難民”をひきつける。

では、この状況に、どう対応すべきなのか?