エプスタインの謎の素性

そして、英国ばかりではなく世界中を驚かせたのが、英国のチャールズ国王の弟、アンドルー元王子(66)の逮捕だった。

英国王室の関係者が逮捕されるのは17世紀のチャールズ1世以来だというから、異例中の異例である。

もっとも、アンドルーの疑惑が騒がれたのは2000年代からだった。アメリカの女性が、自分が未成年だった2000年前後に、エプスタインから強要され、アンドルー王子と性的関係をもたされたと訴えたのだ。

だが、アンドルー王子は疑惑を否定し、反省さえしなかったことから英国民の反感を買い、公務から退かされていた。

昨年は、中国のスパイと親密だったという疑惑も浮上し、英国王室もかばい切れなくなり、称号や勲章が剥奪されてしまっていた。

今回の逮捕は、今年1月末に公開された300万ページに及ぶ「エプスタイン文書」が関わっていることは間違いないようだ。

では、エプスタインとはどんな人物なのか。彼が紹介される時はいつも「謎の大富豪」という“肩書”がつく。

それは、彼がどのようにして巨万の富を築いたのかが、いまだに完全に明らかになっていないからである。

エプスタインが所有していたリトル・セント・ジェームズ島
エプスタインが所有していたリトル・セント・ジェームズ島(写真=Navin75/CC-BY-SA-2.0/Wikimedia Commons

なぜ大富豪になったかはわからない

彼は1953年にニューヨーク市ブルックリンで生まれたユダヤ人。高校卒業後、クーパー・ユニオン大学に入学して約2年通い、その後にニューヨーク大学(NYU)のクーラント数理科学研究所へ編入、のちに中退している。

富裕層の子弟を集めた「ドルトン・スクール」で教職に就き、数学と物理学を教えていたが、そのときの教え子に、大手投資銀行「ベアー・スターンズ」会長の息子がいたそうである。

1976年、教職を離れて「ベアー・スターンズ」に入社した(一説には彼が大学を卒業していないことがバレたため首になったという報道も)。その後わずか4年でパートナーの地位に昇進したという。

だが、その直後に退社してしまうのである。翌1982年に資産管理会社「J・エプスタイン・アンド・カンパニー」を設立している。

超富裕層の「資産管理アドバイザー」として活動していたが、その契約内容はほとんど非公開なため、報酬などはわからず、彼の会社も非上場なため内情はほとんどわかっていないといわれている。

そのため、「富裕層相手の恐喝を繰り返していた」「富裕層をターゲットにした秘密のネズミ講が原資になっている」「アメリカの諜報機関の手先として動いていた」などの噂がメディアで報じられたこともあったようだ。

大富豪としてエプスタインの名前が表に出てきたのは2000年初め頃だという。