香港問題と靖国問題の共通点

【垂】新香港人は毎日流入してくるのでその数はどんどん増えています。現在、新香港人は全人口の約15%を占めるとされています。その多くは貧困層ですが、一方で中国の富裕層が投資移民などで数万人から数十万人も香港に流入しているとも言われています。

香港大学や香港中文大学のような名門大学にも大陸出身の学生が急増し、有名病院でも大陸富裕層の利用が集中して「病床を占拠している」との批判がありました。

こういう状況により、香港人と新香港人の対立が激化していったのです。先ほどの香港大学の世論調査では、香港で最も深刻な問題として「政治問題か、経済問題か、社会問題か」と尋ねる調査があるのですが、ずっと社会問題がトップで、アジア通貨危機の時期だけ経済問題が首位となりました。

政治問題、つまり民主化問題を最重要と考える人は当初きわめて少数だったのです。ところが、習近平政権期に入り、西側との摩擦や国家安全維持法の制定の動きなどを契機に、政治的自由や民主化への関心が高まり、政治問題を挙げる人の割合が増えてきました。

靖国問題のように、中国側の「メンツ」が絡んで強硬化した面も否めません。これが香港問題の現状です。

最初から頓挫していた民主化デモ

【垂】従来、中国は香港に対して比較的うまく統治していたのですよ。ところが、その実態を十分に把握しないまま、習近平政権になると国内で「国家の安全」を強調し、香港でも国家安全維持法を制定(2020年)して本土と同じ発想で統制を強めました。その結果、学生らの民主化要求を力で抑え込み、悪循環を生んでしまいました。

民主化問題が最も盛り上がったのは2019年で、確かに何百万人もの香港人が街頭に出て抗議しました。その光景は、みなが怒り、民主化を求めているかのように見えました。ところがその後、学生たちが空港を占拠したり、大学にバリケードを築いたりして運動が過激化すると、市民の多くは一気に距離を取り始めたのです。

2020年1月1日に香港で行われたデモ行進
2020年1月1日に香港で行われたデモ行進(写真= Studio Incendo/CC-BY-2.0/Wikimedia Commons

実際、多くの市民はもともと社会的な不満を抱えており、学生の掲げる民主化要求に完全に同調していたわけではなく、デモを不満のはけ口として利用していた側面が大きかった。つまり、学生と市民は「同床異夢」だったのです。