「一国二制度」の最終防衛ラインとは

【兼原】香港は金融センターとしては今でも生き残っていますよね。

兼原信克、垂秀夫『中国共産党が語れない日中近現代史』(新潮新書)
兼原信克、垂秀夫『中国共産党が語れない日中近現代史』(新潮新書)

【垂】その通りです。2019年のデモの際、麻生太郎財務大臣が「もう香港はだめだから、金融センターの機能を大阪に移したらどうか」という趣旨の発言をしましたが、これは実態を必ずしも理解したものとは言えません。

東京証券取引所に上場している外資系企業はごくわずか(10社程度)ですが、香港には数百社規模の外資系企業が拠点を構え、証券取引所に上場している企業数も圧倒的に多い。さらに英語が通じるという強みもあります。

香港経済が本当に弱体化するとすれば、その理由は一つ。中国経済そのものの悪化です。

香港は長年、中国経済、とりわけ南中国へのゲートウェイとして機能してきました。そのため外資系企業や中国本土の企業が本部を置いたり、香港市場で上場してきたわけです。したがって本土経済が停滞すれば、当然ゲートウェイとしての役割も縮小します。これが香港経済にとって最大のリスクです。

では今後、「一国二制度」の行方を見極める上でどこに注目すればよいかといえば、それは三権分立のうちの「司法」です。現時点で中国当局は、香港の裁判所、とりわけ終審法院(最高裁判所)の判事人事までは直接介入していません。

香港終審法院の庁舎
香港終審法院の庁舎(写真=Craddocktm/CC-BY-SA-3.0/Wikimedia Commons

香港の終審法院には現在も外国人判事が「非常任判事」として参加していますが、この人選にまで中国が手を出すようになれば、法の支配は完全に崩壊し、一国二制度は本当の危機を迎えるでしょう。

2019年の抗議運動では大きな騒ぎになりましたが、実際には日本企業の香港撤退はほとんど見られませんでした。もちろん香港と中国経済の先行きに対する不安は高まっていますが。

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