日本メディアが報じなかった「民主派」の素顔
【兼原】過激派のテロ事件を契機に、日本でも国民の多くが左翼勢力から離れていった構図にちょっと似ていますね。戦後一貫して続いていた日本の左傾化は、三菱重工爆破事件やあさま山荘事件が起きた70年代がピークでした。
【垂】だから最終的に、多くの市民は冷めた態度を取るようになっていきました。ところが日本のメディアでは、日本語を話すリーダー・周庭(アグネス・チョウ)などが注目され、あたかも香港全体が民主化を強く求めているかのような印象が広がりました。
周庭はイギリス系のスクールで教育を受けた人物です。香港の学校教育には、中国系とイギリス系の流れがあり、教育理念や価値観に大きな相違がありました。従来の香港人と、大陸から移住してきた新香港人との間の対立とは別に、教育背景による違いもあったわけです。
ところが日本を含め世界のメディアは民主化の側面ばかりを強調し、民主化が「絶対的な善」であるかのような前提で報道していました。しかし、香港の民主派にもさまざまな立場があり、日本から見れば許せない人物もいるのです。
たとえば、香港民主党は香港民主化運動の老舗的な組織で、初代主席の李柱銘(マーティン・リー)は国際的にも著名な政治家でしたが、四代目主席の何俊仁(アルバート・ホー)は尖閣諸島へ上陸を試みたり、在香港日本総領事館に乱入したりした人物です。つまり、香港の民主化運動も「中身」をよく見て対応を考える必要があるのです。
「イナゴ」と呼ばれる中国人
【兼原】香港の民主活動家は、最後は何の関係もない慰安婦問題までやっていました。慰安婦の像を路上において、横に香港の活動家が座っている写真を見たことがあります。大陸側の統一工作に取り込まれていたのだと思います。
【垂】さらに、社会問題の側面も無視できません。新香港人が増えたことに加え、コロナ前の香港では、深圳から大量の「買い出し客」が押し寄せるという現象が問題化しました。年間で1000〜2000万人規模とも言われ、大量に日用品を買い占めて去っていくため、地元では「イナゴ」と揶揄されました。
日本のメディアではほとんど報道されませんが、Googleで「香港 蝗蟲(イナゴを意味する中国語)」と中国語で検索するとたくさんの関連情報が出てきますよ。実際、香港問題の本質の一端はこうした社会問題にあるのです。
何度も申し上げますが、香港にはもともと民主主義が存在していたわけではありません。歴史的に香港では労働争議や社会不安が繰り返して発生してきました。
例えば、イギリス統治下の1967年に起きた争乱は「六七暴動」と記されて、イギリス側の秩序維持に正当性があるかのように論述されている一方、2019年のデモは「香港民主化デモ」と記載され、抗議側に正当性があるかのように書かれます。しかし、統治当局(軍・警察)が市民を強硬に弾圧した点や、背後に社会問題が横たわっているという点は、両者に共通しています。
もちろん時代背景は異なり、六七暴動が文化大革命の影響を強く受けていたことは明らかですが、本質は「民主化」というよりも「社会問題」が大きな共通要素といえるでしょう。

