世界の血液型分布は「北はA、南はO、東はB」

日本と韓国から一気に視野を広げ、世界全体を俯瞰してみると、血液型分布の傾向はまったく異なる姿を見せてくれます。世界的に見ると、もっとも多い血液型はO型なのです。

とくに中南米の先住民の間では、O型がほぼ100%という地域も存在するほどです。また、アフリカ大陸や西ヨーロッパでも、O型が高い割合を占めています。

一方で、A型は中央および東ヨーロッパに多く見られます。たとえばオーストリアやデンマークなどでは約45~50%がA型です。

B型はアジア圏で目立って多く、中国やインドでは人口の20~30%がB型とされています。いずれの地域・国でも、もっとも割合が少ないのはAB型ですが、ヨーロッパでは数%にとどまるのに対し、日本や韓国、中国など東アジアでは約10%と、比較的高い割合が見られます。

これらの傾向をまとめると、ヨーロッパではA型とO型が多く、B型は少ない傾向があります。しかし、ユーラシア大陸を東に向かって移動するにつれて、B型の割合が徐々に増加していきます。たとえば、東南アジアのタイでは、B型が30%以上に達しています。

また、緯度によるパターンも見えてきます。北の地域ほどA型が多く、南に行くほどO型が増える傾向があるのです。同じヨーロッパでも、北欧ではA型の割合が50%近くあるのに対し、南のイタリアではO型が多くなります。

さらに南にあるアフリカ大陸では、O型の割合が約60%に達します。アジアでも同様の傾向が確認できます。

日本のような比較的北に位置する国ではA型が多く、南にあるマレーシアではO型が約60%、さらに南に位置するオーストラリアの先住民も60%がO型とされています。このような血液型分布の地理的パターンは、なぜ生じているのでしょうか。

自然選択が生み出した血液型の地域性

じつはそこには、人類の進化と適応の歴史が刻まれているのです。

血液型でわかる 病気とケガのリスク
深瀬浩一『血液型でわかる 病気とケガのリスク』(宝島社)

なぜ血液型の分布に明確な地域差があるのか――この根本的な疑問について、1900年にABO式血液型が発見されて以来、数多くの研究者がさまざまな仮説を立てて検証してきました。

そのなかでも、現在もっとも有力とされているのが、「血液型によって感染症への感受性(かかりやすさ)が異なる」という考え方です。感染症は、人類にとって「生死を分ける敵」ともいえる存在です。

一度流行が始まると爆発的に拡大し、短期間で大勢の人命に関わるようになります。そして感染症には、特定の地域で集中的に流行することが多いという大きな特徴があります。血液型によって特定の感染症に対するリスクに差があるとしたら、その地域で長期間にわたって流行した感染症に対し、高いリスクをもつ血液型の人々は減少するのではないか。

そして反対に、低リスクの血液型の人々は、生存に有利となって増加するのではないか――そんな自然淘汰が数千年、数万年という長い年月をかけて起こり、最終的にその地域の環境にもっとも適応した血液型が、多く残っているのではないか……。

このような仮説は、「進化論の父」チャールズ・ダーウィンが提唱した「自然選択(自然淘汰)論」が広く受け入れられ始めた20世紀初頭に、大きな注目を集めました。

そして、多くの血液学者や進化生物学者が、血液型についての研究に熱心に取り組んだものの、当時は疫学(病気の罹患・流行に関わる法則を研究する学問)の調査技術や統計解析手法が未発達だったため、決定的な証拠を得ることはできませんでした。

しかし、21世紀に入ってからは、科学技術の飛躍的な進歩により、大規模で精密なデータが収集できるようになったことで、血液型と感染症の関係が徐々に、しかも確実に明らかになってきているのです。