本能寺の変を起こした動機

もっとも、この時点で、光秀が信長の信頼を失っていたとは思えない。金子拓氏は次のように書く。「しかし言えるのは、本能寺の変直前においても、信長は光秀を強く信頼していたことである。(中略)つまり光秀は、武田攻め、家康らの接待、そして中国攻めのための出陣と、信長の命を受け休む間もなく奔走していたのである。これだけ立てつづけに重要な役目を与えられるのだから、信頼されていないはずはない」(『織田信長 不器用すぎた天下人』河出書房新社)。

そうはいっても、佐久間信盛の例もある。長宗我部元親に対する取次としての立場を完全に無視された光秀が、信長による四国討伐を、明智家の存亡の危機として受け取っても不思議はない。

現在、光秀が本能寺の変を起こした動機については、この「四国説」が有力である。光秀を追い詰めたのは信長である。しかし、信長が戦略を変更したのは、光秀にとっては格下のライバルのはずだった秀吉による、瀬戸内海の制覇があった。

秀吉に光秀を追い詰める意図があったかどうかはわからない。しかし、最後に天下を取った秀吉の力量のほうが、結局は光秀より勝っていた、ということはいえるのだろう。

(初公開日:2026年1月14日)

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