建築業者から告げられた一言

Aさんは、当時を振り返る。

「マンション購入時、水害のハザードマップは共有が義務化されてます。しかし耐震性能のIs値など、普通の人は知りません。それに購入時『Is値が0.1ですよ』と言われても、意味がわからなかったと思います」

築古マンションで本当に確認しなければならない「数字」とは、これだった。

Aさんは遅ればせながら、Is値を管理会社に問い合わせた。すると、このマンションのIs値は「0.2」しかないことが判明。青ざめたAさんは、マンションの耐震補強を住民で作るマンション管理組合にはかり、業者にも相談した。

「ところが建築業者から、このマンションは耐震補強ができない構造だと告げられたんです」

Is値が決定打となり、Aさんは数年後にこの物件を売却した。幸い購入時よりも高い7500万円で売ることができたというが、誰かが「ババを引いている」と考えると、後味は良くない。

「私が購入した築古マンションは、便利で、キレイで、普通に住む分には何の不満もありませんでした。熊本地震がなければ、今でも住んでいたかもしれません」

高齢化するニッポンのマンション事情

ただAさんは、築古マンションのマイナス面として、こんな点も挙げている。マンションの住民の7割ほどが65歳以上の高齢者で、とくに管理組合の理事会は70代の住民で構成されていたというのだ。

「実は高齢者の多いマンションは、お金のかかる大規模修繕に積極的ではないのです。私も管理組合の会合に何度か参加しましたが、会では少しでも修繕費を安く済ませようとする高齢者の意見が、場を圧倒していました。彼らはあと何年生きるかわからないので、そこまでお金をかけなくてもいいという考えなんでしょう」

高齢者が中心になると、複雑な問題は先送りされやすい。マンション管理組合の高齢化や機能不全は、全国的にも問題になっている。

マンションは単なる建物ではなく、「合意形成の共同体」でもある。まるで日本社会の縮図を見ているかのようだ。

築古マンションの購入者は増加傾向にあり、2023年に首都圏で築31年以上のマンションを購入した人の割合は64.3%にのぼるという調査がある(*2)。マンション価格の上昇で、今後ますます注目を集めるだろう。

東京都八王子市の集合住宅
写真=iStock.com/Masaaki Ohashi
※写真はイメージです

*2 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000207.000049400.html