世界が規制に動いた――訴訟と法整備が加速

そうした中、世界はスマホ・SNS規制に確実に舵を切っている。大人も子供も、スマホの中に浸ってちゃダメだ、という声はどんどん増している。

アメリカでは2023年10月、41州とコロンビア特別区がメタ(Meta)を集団提訴。訴状は、FacebookとInstagramが「子どもを意図的に中毒にさせる機能を設計・展開した」と断じ、1700件以上の訴訟が進行中だ。

オーストラリアは2024年11月、16歳未満の子どものSNS利用を全面禁止する法案を可決。違反したプラットフォーム企業には最大4950万豪ドル(約49億円)の罰金が科される。フランスは2026年1月、マクロン大統領が『不安の世代』著者ジョナサン・ハイト教授と会談し、SNS規制強化を発表した。

EUは2025年2月、TikTokがデジタルサービス法(DSA)に違反しているとの予備的見解を発表。「中毒性のあるデザイン」が若年層に与えるリスクを適切に評価していないとして、最大で全世界売上高の6%の罰金を科す可能性がある。

アジアでも、韓国は2025年8月に学校でのスマホ制限法を可決。インドネシアは2026年3月から、国レベルで13~16歳の子どもたちに対するSNSアクセス制限を導入する予定だ。ユネスコは2025年12月の報告書で、世界の過半数がすでに学校でのスマホ規制に踏み切っていると報告している。

科学が証明する「スマホの代償」

なぜこれほどまでに世界は規制に動くのか。科学的エビデンスが明確な答えを示している。

ニューヨーク大学の社会心理学者ジョナサン・ハイト教授は、2024年に世界的ベストセラーとなった『不安の世代』(日本では2026年1月邦訳発行)で、2010年から2015年にかけての若年層の精神的衰退を実証データで示した。10代のうつ病発症率は2010年以降2.5倍に増加。とりわけSNS上での外見比較やイジメなどに少女が特に脆弱になる、とハイト教授は指摘している。少年の場合は、オンラインゲームやオンラインポルノに夢中になる傾向があるという。

ハイト教授は経済学の「機会費用」概念をデジタル消費に適用する。若者が週40〜50時間を画面に費やすことで、現実世界の発達上必須な“体験”の時間が奪われる。その結果、4つのコアな害が生じる。睡眠不足、注意力の分散、依存症、そして社会的スキルの発達阻害だ。

日本でも、繁田雅弘教授(東京慈恵会医科大学)や川島隆太教授・榊浩平助教(東北大学)らがそれぞれの研究を通して、スマートフォンの長時間利用が脳に深刻な悪影響を及ぼすと警鐘を鳴らしている。