「コレステロールを下げれば健康」は誤り

それでも「コレステロール悪玉論」は長く信じられ、医薬品業界もこれに乗りました。代表的なのが「スタチン」と呼ばれるコレステロール低下薬です。

スタチンは肝臓でのコレステロール合成を抑える薬ですが、これが高齢者の死亡率や精神的な不調に関わっているのではないかという議論もあります。日本では電車の飛び込み自殺が増えた背景にスタチンの影響があるのではないか、老人の突然死にスタチンが関わっているのではないか、という指摘もあるほどです。

もちろん医学的にすべてが証明されているわけではありませんが、「コレステロールを下げれば健康になる」という単純な図式が間違いであることは確かです。

結局のところ、コレステロールは体に脂質を届ける大切な役割を持ち、悪者ではありません。卵を食べることを恐れる必要はないし、むしろ断糖高脂質の食生活においては、卵は脂質とタンパク質を同時に摂れる理想的な食品です。アンセル・キーズの仮説と食品会社のマーケティングが作り上げた「コレステロール悪玉論」は、科学的には誤りだったのです。

糖質たっぷりな果物の中では異質なアボカド

Q なぜ果物なのにアボカドは食べてもいいの?

普通「果物」と聞くと、甘くて糖質が多いイメージがありますよね。バナナやリンゴ、ブドウなんかは糖分がたっぷりで、血糖値を一気に上げてしまいます。だから断糖高脂質をしている人にとっては「果物=避けるべきもの」という印象が強いと思います。

有機アボカド
写真=iStock.com/JackF
※写真はイメージです

でも、アボカドだけはちょっと特別。果物なのに食べてもいい、むしろ積極的に取り入れたい存在なんです。

その理由を進化の歴史から見てみると面白い。

アボカドは中南米原産で、昔はマンモスや巨大ナマケモノといった「メガファウナ」と呼ばれる大型動物が種を運んでいました。彼らは果肉を食べて、消化管を通した大きな種を遠くへ運び、排泄することで繁殖を助けていたんです。

ところが最終氷河期にメガファウナが絶滅すると、アボカドは種を運んでくれる存在を失ってしまいました。種が大きすぎて小さな動物では運べないので、自然散布ができなくなり、絶滅の危機に陥ったんです。

そこに登場したのが人類。人間はアボカドを食べ、種を持ち運び、やがて栽培するようになりました。つまりアボカドは「人類に救われた果物」なんです。人間がアボカドを助け、アボカドは人間に脂質を提供する――そんな持ちつ持たれつの関係が続いてきたからこそ、今日までアボカドは生き残りました。