白井健三(体操世界選手権覇者)

しらい・けんぞう 
1996年、横浜市生まれ。3歳から父・勝晃の運営する鶴見ジュニア体操クラブで競技を始める。11年、全日本ジュニア2部、全国中学選手権の床運動で優勝。同年全日本種目別の床運動で2位。新技「シライ」はF難度の「後方伸身宙返り4回ひねり」。

体操界の「新星」である。まだ17歳。初出場した先の世界選手権の種目別ゆかで、日本勢として史上最年少の王者となった。

161センチ、51キロのからだで、難しいひねり技を連発し、技名に「シライ」の名を残した。ついたあだ名が「ひねり王子」。あどけなさの残る顔をほころばす。

「自分が得意な技がひねりなので、そう(ひねり王子)呼ばれてもしょうがないと思うんですけど……。まあ……。普段はそんな呼ばれ方を直接、されないので、自分の中で特に意識はありません」

両親は元体操選手。どうして目が回るほど、くるくる回れるのかといえば、おむつをしている頃から、その両親が指導する体操教室を遊び場代わりにして、トランポリンでぴょんぴょん跳びはねていたからだそうだ。

もちろん、その後の体操クラブでの練習のタマモノでもあろう。3歳から体操のトレーニングを始め、中学校3年の2011年、全日本選手権(種目別)のゆかで2位となった。ことしは日本代表決定競技会のゆかで優勝し、世界選手権キップを手にした。

「大会は、ただただ、楽しかったです。緊張しなかったし、歓声も楽しめました。集中して、自分の演技がしっかり出せれば、結果はついてくると思っていました」

帰国会見での受け答えは、17歳とは思えない、落ち着きぶりだった。100人ほどの記者の質問攻めにも、ちゃんと自分のコトバで返していく。聞けば、試合同様、会見も緊張しないそうだ。子どもの頃、緊張して試合で失敗し、それ以降、「もう何事も、結果を考えず、緊張しないよう決めたんです」と説明するのだった。

神奈川県立岸根高校に通う2年生は、「ぼくはフツーの高校生です」と照れる。

「体操部のみんなでお昼ごはんを食べている時が一番楽しいです。音楽も好きです。大会の試合前は、ファンキーモンキーベイビーズを聞いていました」

勉強では好きな科目が「地理と日本史」、苦手な科目は「数学」という。甘いものが好きで、メロンパンが好物だそうだ。音楽を聞いたり、友達とおしゃべりをしたりしている時がリラックスできる。

モットーが「やりたいことをやる」である。

「だって、我慢とか、あんまりしないタイプですから。やりたいことをやらないと、後悔するじゃないですか」

目標は、日本のエースの内村航平みたいなオールラウンダー。得意のゆかと跳馬以外の種目の演技も強化し、全6種目で安定した力をつけることである。

「世界選手権の経験を無駄にせず、この2種目を軸として6種目で点をとれていけたらいいなと思います。高校生らしく、6種目をきっちりやりたい。オールラウンダーにならないと、東京五輪のエースにはなれません」

“体操ニッポン”を引っ張る存在になるかどうか。ひねり王子は、23歳で、2020年東京五輪を迎えることになる。

(松瀬 学=撮影)
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