「ゲットー」を統合と再開発するデンマーク
デンマークも移民だらけの地域が統合化を拒んでいることに悩んできた。スウェーデンは小国であるが、その寛容さから、多くの難民や移民を受け入れてきた。
だがシリアやアフガニスタンの紛争で起きた難民危機により、ここ数年、デンマークでは従来左派系だった人々の間でも移民に対しては大変厳しい意見を持つ人が増えており、移民の統合を強力に進めるべきだという意見が主流になっている。
デンマーク政府は移民が多く住む公営住宅のうち29カ所を「脆弱な住宅地」(ゲットー)と呼んで2010年から公式発表しており、統合と再開発の対象にしている。
「ゲットー」の定義は大変明確で、「18~64歳の40%の住人が無職か教育を受けていない」「18歳以上の住人の2.7%が犯罪で検挙されたことがある」「50%以上が非西洋圏からの移民」という条件のうち2つ以上に当てはまるところになっている。
このリストに掲載されているなかで最も有名なコペンハーゲンの郊外にあるミョルニルパルケン(Mjolnerparken)の扱いが大変な議論になっている。コペンハーゲンの国会や国立博物館まではバスなどの公共交通機関で30分ほどとアクセスも良い。
家族が犯罪を犯した場合は全員が公営住宅を強制退去
1993年には住民の約36%がデンマーク系住民だったが、2000年代以降は移民系住民が大多数となり、2016年には約82.6%を占めた。パレスチナ系の過激派もここで育ち、イスラム系などのギャングの抗争による殺人や暴力事件も問題になっている。
デンマーク政府は、こうした「ゲットー」を移民統合政策上の課題と位置づけ、2018年以降、さまざまな対策を導入してきた。例えば、対象地区の公営住宅では、家族の一人が犯罪で有罪となった場合、家族全体を退去させることが可能とされている。
また、対象地区に住む子どもは、1歳から就学前まで週25時間の保育施設に通うことが義務付けられ、従わない場合は児童手当が停止される場合がある。
さらに政府は「並行社会をなくす」政策の一環として、2030年までに対象地区の公営住宅の割合を最大40%まで削減する方針を掲げ、建物の売却や取り壊し、再開発などが進められている。
英デイリー・メールによれば、このような政策を支援してきたラース・ロッケ・ラスムセン元首相は、このような「ゲットー」が暴力を広めることでより多くの犯罪が起き、移民が巻き込まれる可能性があり、「ゲットー」は「デンマークを分裂させてしまった」と述べているとしている。
デンマーク政府は、こうした「ゲットー」を社会の分断を生む「並行社会」と位置づけ、統合政策を進めてきた。対象地区では、子どもにデンマーク語や社会規範を教える保育制度などが導入されている。

