悲しむ時間を取ることで解決することも
悲しむ時間をきちんと与えたケースを1つ紹介しよう。ジェシカがボストンの小さなNPOの副理事を務めていたとき、24歳の同僚、エレンが重い病にかかり、3カ月の入院生活の後他界した。
「彼女は組織の要のような存在だった」と、ジェシカは言う。このNPOでは15人のスタッフが働いていたが、エレンが他界したのは冬休みに入る直前だった。ジェシカは冬休みの間に、専務理事と協力してスタッフの立ち直りのための計画を立てた。「この状況についてどう語り合うべきか、スタッフをどのように支えるべきかについてずいぶん話し合った」と、ジェシカは語る。
スタッフが職場に戻ってきたとき、ムードは「暗かった」。「誰もがどこかの時点で私の部屋に来て、泣いた」と、ジェシカは語る。だが、彼女は決して涙を止めようとはしなかった。
彼女は1人1人のスタッフと面談して、悲しみを処理し、前進するための方策を練る手助けをした。「彼らはどうすればいいのかわからず戸惑っていた。仕事をすべきなのか、すべきでないのか判断しかねていた」と、彼女は語る。ジェシカと専務理事はスタッフに、今できることをしてほしいと言った。彼らは毎朝ミーティングを開いて、現状を報告し合った。これはスタッフに自分の辛さを表現し、互いの絆を深める機会を与えた。
ジェシカは組織の活動に支障が出たことは認めるが、それを立ち直りプロセスの一環として受け入れている。「半年以上かかったが、私たちは以前よりはるかに感情的つながりの強い組織になった」と、彼女は語っている。
(ディプロマット=翻訳 Getty Images=写真)