「自分株式会社」を拡張し、
「信頼残高」を残せば昇進

私の見立てでは、偉くなる人というのは「個」として自立し、主体的にキャリアを積む意識がある。つまり“アイカンパニー”を構築しているのです。自分自身を会社と見立て、自分株式会社を経営する視点で、周囲との関係性をどうつくればいいか考えてみる。すると、信頼を得ることの重要性に気付くはずです。会社経営していくには、何よりこの信頼をしっかりと貯蓄しておく必要があります。

それがうまくいくと、アイカンパニーの規模を広げ、“信頼残高”を増やすことができる。そんな人材が企業でも高い地位まで上り詰めることができるのです。

さらに、ロジカルシンキングや英会話力など社内だけではなく社外でも活かせる技術を磨けば、自分の商品力を高めることにつながります。そうした持ち運び可能(ポータブル)なスキルがあると、組織に頼らず個人として活躍でき、組織外でも高い評価を得られるようになる。これが私の描く、偉くなる=出世のスキームです。

「俺は偉くなるんだ!」と公言する人、私は好きですよ。自らを鼓舞し、公言することで自分にプレッシャーをかけようとする心意気は成長を促すはずですし。有言実行すればいいだけの話です。

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偉くなりたい人vs偉くなりたくない人 対決

むしろ、「偉くならなくたっていい」と公言する人のほうがよほど問題です。スポーツにおいても仕事においても、「勝ち負けに意味はない」というセリフは、おおむね敗者の弁です。個人も企業も、常に上を目指して努力し、やっと現状維持を保てるもの。現状で満足した瞬間から、衰退するのです。

責任を取る必要のない万年平社員で十分だという人は、齷齪しない無欲な人と言えば聞こえはいいですが、利潤を追求し、生き残り競争に勝たねばならないこれからの企業にとってより「お荷物」感が増すかもしれません。

ひとたび業績が悪化しリストラされれば、転職市場での苦戦、給料激減といった将来像が見え隠れします。このご時世、定年まで企業にぶら下がろうという発想のほうがよほどリスクの高い賭けです。

それなら、「偉くなってやろう」と努力をしたほうが精神衛生上もいい。気持ちが内向きになりがちな世の中だからこそ、安定志向を脱し、大きな夢を持つ。すると、不思議なことに、同じような志を持つ人が集まり、自分だけのネットワークもできるのです。

リンクアンドモチベーション 代表取締役社長 小笹芳央
1961年、大阪府生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、リクルートを経て2000年にリンクアンドモチベーションを設立。同社独自の技術「モチベーションエンジニアリング」が一躍話題に。
(構成=堀 朋子 撮影=上飯坂 真)
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