利益どころか購入額の30%の損失
中国では不動産ブームに乗り、投資の意味も込めて物件を購入する動きが過熱していた。厳しいローン審査ゆえに、貯蓄の大部分を頭金につぎ込む人々が多く見られた。
だが、安易に不動産で儲ける算段は甘かったようだ。中国中部の工業都市・合肥市に住み、農業関係のテック企業でマーケティングを担当する35歳女性の例を、ニューヨーク・タイムズ紙が伝えている。
女性は昨年2月、夫と暮らすマンションを売りに出した。3年前に約33万ドル(約5100万円)で購入し、内装と家具に8万ドル(約1250万円)をかけた物件だ。
家具付きのまま購入時と同額という破格の条件で売り出したところ、数十人の仲介業者や買い手候補が関心を示した。ところが、交渉段階で実際に提示された価格は、希望額より15%以上安いものばかりだった。家具の価格も含めると、30%以上の損となる。
安い価格を提示されるたびに、女性は怒りにも似た感情を覚えたという。さぞ利益が出るだろうと期待しただけに、落胆は大きい。「なぜこうなるのか、どうしてここまでひどいのか分からなかった」と同紙に語る。
「マンション購入は堅実な投資でなかった」
女性は結局、10万ドル(約1560万円)を超える損失を受け入れられず、売却を断念してそのまま住み続けることにした。「マンション購入が堅実な投資だと信じたのが間違いだった」と反省しきりだ。
首都・北京でも状況は厳しい。IT業界で働くある女性は昨年8月、マンションを売却した。2016年、価格が急騰するなか焦って購入した物件だ。その後も価格は上がり続け、不動産業者から売却の打診が相次いだが、すぐには動かなかった。やがて子どもが生まれて手狭になり、いざ売ろうと決めた頃には、市場はすでに冷え込んでいたという。
内覧に訪れるのは、買う気のない「ひやかし客」ばかり。「誰も真剣に価格を提示してくれず、パニックになった」と女性は振り返る。結局、購入時とほぼ同額での売却となり、「この9年間を無駄にしたようだ」と語った。取引が成立しただけでも幸運だった、と彼女は言う。
両親含めた「6つの財布」を動員するが…
「負の資産」という言葉が、いま中国で急速に広がっている。購入した住宅の市場価格が銀行から借りた残債を下回り、売却しても借金だけが残る状態を指す。ビジョンタイムズが具体例を挙げて解説している。
600万元(約1億3000万円)で住宅を購入したとする。頭金として180万元(約4000万円)を用意し、残る420万元(約9000万円)を銀行から借り入れた。中国では若い世代が家を買う際、本人夫婦だけでなく、双方の両親、さらには祖父母まで「6つの財布」を総動員して頭金をかき集めることが珍しくない。

