金をテコにしたドル離れの妥当性
また中国が、ドル離れであり人民元の国際化の観点から金に力を入れていることも、注目される動きである。実際、中国は米国債を手放して得た資金で地金を購入している模様だ。加えて、上海では中国国内の個人投資家による金取引が活発化している。もはや金相場はロンドンとニューヨークのみならず、上海の動向にも左右される時代だ。
金のみならず、銀の相場に関しても、中国は大きな影響力を持つようになった。いずれにせよ、2025年における金価格の歴史的な高騰は、ドル不安の“受け皿”としての金の価値の高さを世界に知らしめた。そして同時に、中国が金の価格形成を通じ、金融市場にグローバルな影響力を持つようになったことを印象付ける出来事でもあった。
実際、衆議院選挙後の“戻り円高”を中国勢によるドル売り金買い(そして日本国債買い)圧力から説明する声も、金融市場では高まっている。1月下旬より米国でスコット・ベッセント財務長官を中心に“強いドル”に言及する声が高まっているのは、欧州勢に加えて中国勢の米国債離れが着実に進み、米ドルの信用力の低下も懸念されるようになったためではないか。
ただし、中国が多額の金を保有したからと言って、人民元の国際化が進むかはまた別の話だ。確かに対米ドルでの人民元高を容認したり、さらに政府が金準備を多く抱えたりするなどの点で、人民元は魅力を高めている。一方、その流通量は依然として米ドルやユーロに比べると限定的であり、国際間での貿易や金融の決済需要には耐えられない。
ますます米国と一蓮托生の日本
米国債に勝る流動性を持つ国債は存在せず、ゆえに米ドルに勝る流動性を持つ通貨も今のところ存在しない。人民元が米ドルに代わる国際決済通貨になるまでの道は険しいが、一方、この間の米国による圧力を受けて、中国が米国債離れでありドル離れを着実に進めていることは、今後の国際政治経済情勢を考えるうえで注目すべき動きである。
他方の日本だ。これまで日本は、経済面に関しては米国と中国の間でバランスを取る戦略を取ってきた。しかし近年は米国を一段と重視するようになり、高市政権になって以降はその傾向をなおさら強めている。米国にとっても、有力国を中心に米国債を手放す動きが加速する中で、その動きから距離を置く日本の存在は重みを増している。
見方を変えると、そもそも米国と一蓮托生であった日本は、その道をさらに究めようとしていると言えよう。この選択の成否は今のところ分からないが、少なくとも世界の主要国の中で、日本の選択が今のところ異質の選択をしていることだけは事実である。日本経済は良くも悪くも、米国の動きに一段と左右されることになるのだろう。
(寄稿はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です)


