暗殺された二重スパイ

竹聯幇の悪名高い共謀事例は1984年、台湾軍高官が竹聯幇の指導者と会談し、国民党政権を批判したヘンリー・リューの暗殺を指示したことだ。

暗殺は実行され、米国内の事件であったためFBIが捜査に乗り出し、米議会でも問題となった。

これが「江南事件」と呼ばれるのは、筆名が江南(本名=劉宜良。江蘇省人)を名乗ったことによる。周囲からは「ゆすり」で文章を書くチンピラだとして評判は悪く、情報屋の側面があった。中国共産党、台湾国民党、そしてCIAに情報を売る男だった。

彼は『蒋経国しょうけいこく』伝記を書いて出版したばかりで暗殺理由は、この本で蒋経国の知られたくない秘密が書かれたからだと噂された。

ところが、当時、香港、台湾でこの事件を取材した若林正文(当時=東大教授、早稲田大学名誉教授)によれば、その本の内容にはたいした情報もなく、むしろ次に江南が書こうとしていた『呉国禎』伝記を阻止するためだったと分析している。呉国禎は蒋経国の政敵だった。

1万人の犯罪グループ

竹聯幇は米国の中国系マフィア、日本のヤクザ、香港の複数の三合会など、国際的な犯罪グループと関係を築いてきた。現在、竹聯幇は台湾全土に広く拠点を置いており、少なくとも1万人の構成員がいる。2025年8月、台北の検察当局は、金融詐欺と暗号通貨関連で、犯罪組織のメンバー18人を起訴している。

前述の張安楽は中国と台湾両国のエリート層と繋がり、ヘンリー・リュー暗殺事件への関与が疑われた。1985年に麻薬密輸で有罪判決を受け、米国で10年の懲役刑に服した。台湾に戻った後、1996年に当局の指名手配リストに載せられたため、17年間を深圳しんせんで過ごし、2013年に再び台湾に戻った。

張安楽
張安楽(写真=KOKUYO/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

中国側の有力メンバーは胡世英とされる。胡は習近平に繋がり、他方で国民党元総統の馬英九ばえいきゅうとも親密な関係にあった。胡世英は黒竜江省全人代秘書長をつとめた有力者とされる。