「おべっか」に抗えない納得の理由

裏表の使い分けの激しい人物をみていると、どうにも気分が悪いものだ。

そのような人物の言動を苦々しくみている良識ある人たちが不思議に思うのは、そんな裏表人間が、その見苦しさにもかかわらず、案外うまく出世していくことだ。陰で悪口を言われている上司が、そんなことは夢にも思わず、「いいヤツだ」と言って気に入っている。自分が陰でこき下ろされているなんてつゆ知らず、表面上もち上げられて機嫌よくしている。

その上司のことを本気で尊敬している自分よりも、陰でこき下ろしている同僚の方が、その上司から気に入られ、何かと目をかけられているのが、何とも悔しい。そのように言う人も少なくない。

だまされている上司があまりに哀れで同情するが、ここまで冷酷に裏切って平気な彼が怖い、という人もいる。こんなヤツにだまされるなんて上司も愚かだなと思うものの、人の裏の顔ってなかなかわからないものなんだなあとしみじみ思ってしまう、という人もいる。

実際、おべっかを使う部下が誠実な部下よりも気に入られるといったケースは、どの職場でもよくみられるものだが、そこには先に指摘した自己愛に加えて、上司という立場に必然的に伴う不安も関係している。

オフィスで朝礼をするビジネスパーソン
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上司も常に不安を抱えている

上司がちゃんと職責を果たすには、部下たちから尊敬される必要がある。尊敬というと大げさかもしれないが、少なくとも肯定的な評価を受け、信頼されなければ、上司として部署の人間たちを引っ張っていくことはできない。

だが、上司といえども、部下のだれよりも優秀である保証などない。上司の方が経験値は高くても、上司よりも頭がよく優秀な部下がいるというのは、どんな職場にもありがちなことだ。

ゆえに、上司は常に不安を抱えている。部下からどう思われているのか、どう評価されているのかが気になる。そんな上司にとって、自分をもち上げてくれる部下の存在は大いに救いになるのだ。上司は不安なものだから、あからさまなお世辞であっても、自分を立ててくれて、自分に懐いてくれる部下をつい可愛がってしまうのである。

裏表人間の本性に上司が気づきにくいのは、このように上司が置かれた立場によるところも大きいわけだが、また別の立場上の問題もある。同僚同士だと、自分の前と上司の前とでまるで別人のように態度を変える様子をしょっちゅう目にしているため、裏表の二面性を目の当たりにする機会が十分すぎるほどある。