男は「ロジカル」に、女は「感情」に訴える

(Getty Images=写真)

プレゼンにおけるパフォーマンスについては、「見る」ことのほかにも、明確な男女差があると佐藤さんはいう。

「女性は、かわいい、きれいといった叙情的な言葉がけをされて育ったためか、スピーチも感情主体になる傾向があります。一方、好奇心で物事を突き詰めていく習性のある男性は、プレゼンのスピーチも論理性が強くなりやすい。パフォーマンス学では、『感情プレゼン』と『ロジカルプレゼン』と呼び分けています」

この男女の違いをうまく生かしたのが、今年9月に行われた東京五輪招致の最終プレゼンだ。高円宮妃久子様や滝川クリステルさんをはじめ女性陣は、自身の体験や話題となった「お・も・て・な・し」の言葉で感情に訴えかけるスピーチをしたのに対して、男性は猪瀬東京都知事らが予算、施設や交通網の整備といった具体的な内容を語るロジカルプレゼンに終始している。

フェンシングの太田選手にしても、一見、感情プレゼンのようだが、映像を交えて日本の先端技術を誇示しているところは、紛れもなくロジカルプレゼンなのだとか。

すなわち、女性の特性を生かした感情プレゼンと、男性ならではのロジカルプレゼンをバランスよく組み合わせた編成が功を奏したというわけだ。このプレゼンの組み立て方は、企業でも参考になりそうである。

ならば、トリに登場した安倍首相のスピーチはパフォーマンス学的にはどう評価されるのだろう。

「安倍首相の場合、冒頭で福島の汚染水問題に言及するなどロジカルプレゼンを行いながらも、かつての東京五輪の思い出や、オリンピックによって大学時代にアーチェリーを始めたというような感情プレゼンも上手に取り入れています。また、汚染水に関して『完全に制御されている』と語ったときの、両手を水平にして抑えるジェスチャーも言葉を補う意味ではお見事。感情プレゼンとロジカルプレゼンの両方を押さえた、パーフェクトなスピーチでしたね」

2020年の東京五輪を手中に収めた一国の首相の名スピーチ、じっくり見直して、ビジネスのお手本にしてみてはどうだろう。

(※図版出所=『自分をどう表現するか パフォーマンス学入門』(講談社現代新書)佐藤綾子著より)

(Getty Images=写真)
【関連記事】
男への謝り方と女への謝り方はどこが違うか
男と女、痛みに強いのはどちらか?
男性より女性のほうがスマホに夢中になる理由
男の嫉妬は、なぜ女の呪いの100倍怖いか
男に多い「オタク脳」、女に多い「きずな脳」