汚染水の海への流出など、被災処理の収束の兆しが一向に見えてこない福島第一原子力発電所。他の原発についても廃炉を求める声が、日を追うごとに高まっている。

廃炉にした場合、固定資産である原発の資産価値はゼロになり、電力会社には巨額の損失が発生し、経営が困難になることが予想される。それが、電力会社が廃炉を決断しにくい要因だとの指摘もある。

そこで経済産業省は、このほど電力会社が原発を廃炉にする場合の会計制度の見直し案を策定した。廃炉に関する会計処理を見直して、電力会社が廃炉を決断しやすい環境を整えようというわけだ。

見直し案として挙がっているのは、まず原子炉などの原発設備の減価償却の方法を変えるというものである。電力会社は原発が40年以上動く前提で設備の減価償却をしているが、それより早く廃炉にすれば、減価償却が済んでいない未償却分を特別損失として一括計上しなければならず、財務が極端に悪化してしまうこともありえる。

今回の見直し案では、廃炉で資産価値が一気にゼロになるとはせず、徐々に減っていくものと想定する。そして、それに対応した減価償却費の計上を認めるようにしている。

しかし、本来の減価償却費は売り上げと費用をきちんと対応させるため、新規に導入した設備の費用を一気に計上せず、収益の獲得に寄与すると想定された期間に応じて、その価値を減じる形で費用計上していくもの。福島第一原発の1~4号機はすでに運転を中止しており、原発は収益を生む設備ではなくなっている。その減価償却を認めるということには、会計士として強引さを感じざるをえない。

では、なぜそうまでして減価償却を認めようとするのかというと、電気料金へ転嫁するための“ロジック”づくりのような気がするのだ。

電気料金は「総括原価方式」で決められている。総括原価は、営業費(燃料費、購入電力料、減価償却費、人件費など)と事業報酬(電力設備の建設・維持等の資金調達に必要な支払利息や配当)から、控除収益(電気料金収入以外の収益)を引いたものである。