現行の制度による固定資産の除去にともなう特別損失は、この営業費にも事業報酬にも含まれない。つまり、未償却分は電気料金に上乗せすることができない。しかし、見直し案によって減価償却が認められれば、大手を振って営業費に含められ、電気料金として利用者に請求することができるようになる。
また、会計ルールでは設備を廃棄するために将来かかる費用を、「資産除去債務」という形で積み立てておくことになっている。東京電力でも、「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」に規定された特定原子力発電施設の廃止措置について、2012年3月期の個別決算で8230億4600万円を計上している。
具体的に見ると、福島第一原発1~4号機以外については、経産省の省令に基づいて解体・処分費用を見積もり、その割り引き現在価値を計上している。一方、福島第一原発1~4号機については特定の原発の解体作業に関する知見が乏しく、算定も困難なため、省令に基づく総見積額の計上にとどめている。ただし、被災状況の把握が難しく、その額が変動する可能性があることを東電も認めている。
もしも廃炉のための費用が不足した場合、今回の見直し案では電力料金から充当していくことになる。結局、廃炉にともなう諸々の経費を利用者にも負担してもらおうというのが見直しの狙いだったような気がする。
経産省は一般からの意見募集をしたうえで、年内にも制度を変更する見通しというが、果たしてどんな声があがってくるのだろう。
(構成=高橋晴美 図版作成=ライヴ・アート)