「“骨密度”をイメージしていただければいいと思います。骨の中のカルシウム量は、18歳くらいでピークを迎え、これがその人の『最大骨量』となります。その後、カルシウムはほとんど蓄積されなくなり、40歳くらいまではほぼ一定量を維持しますが、それを過ぎると徐々に骨量は低下します。そして、いわば貯金を取り崩すように、骨に蓄えられたカルシウムを使わざるをえなくなるわけです。貯金がある量以下になれば、『骨粗鬆症(こつそしょう)』と診断されることになります。だから、最大骨量をいかに高くするか、すなわち成長期にどれだけ貯金できるかが子供たちの数十年後の健康にかかわってくるというわけです」
その貯金をどんどん増やせるのが、小学生から高校生までの時期。女子の場合、小学4年~中学3年のころは、本来なかなか吸収されにくいカルシウムの吸収率が特にいい時期なので、なおさらといえるだろう。
牛乳や乳製品にはやせる効果があるかもしれない
そんな大切なカルシウムなのに、「ここ10年くらいで、カルシウムの供給源として大きな役割を果たしてきた牛乳や乳製品の小中学生の摂取量が1日平均100ミリグラムも減っています。これは大問題」というのが現状だ。
ここで厚生労働省が発表している指針「日本人の食事摂取基準(2010年版)」を見てみよう。カルシウムの摂取基準が年齢区分別に記載されている。たとえば10~11歳では、男女とも推定平均必要量は1日600ミリグラム、推奨量は700ミリグラムとされている。同じ年齢区分で実際に摂取している量は、「国民健康・栄養調査(11年)」によると、平均値が657ミリグラム、中央値で629ミリグラム。つまり、不適切なダイエットをしている子供だけでなく、それ以外の子供たちもカルシウム不足の危険にさらされているのである。
「カルシウム摂取量が減少した第1の要因は、学校給食で牛乳が提供されないケースが増えていること。牛乳を毎日出す必要が本当にあるのか、和食に牛乳は合わないなど、理由はさまざま。原発事故を受け、放射能汚染を避けようと慎重になっているケースもあります。第2の要因は、飲み物の多様化。かつては毎日の牛乳配達を利用する家庭がたくさんありましたが、今は減少傾向にあります。ペットボトル飲料など、家庭にはたくさんの飲み物があふれていることもあり、牛乳を常備する家庭が減っています。第3の要因は、骨ごと食べられる魚料理が食卓にのぼらなくなったこと」
第2、第3の要因については家庭での取り組みで解消できる。とはいえ、家族全体の生活習慣にもかかわることだけに、かなり高いモチベーションがなければ、親も子も実践できないだろう。はたして、それほどのモチベーションになるような“何か”があるだろうか……。じつは、あるのだ。