「夏休みともなると、近所の平均2億円以上の高級住宅地の家々の前にはビーチパラソルが立ち並びます。その家に住む子どもたちが自分で作ったレモネードの売店を開くからです。何もお小遣いに困っているわけではありません。お金は『get(得る)』ものではなく、自ら『earn(稼ぐ)』ものであることを学ばせようとしているのです。売れなければ、PRの仕方を変えたり、値段を下げたり、子どもなりに工夫をして失敗から学ぶことを覚えます」とホーさんはいう。
もちろんユダヤ人の間でも「節約は美徳である」ことは共通認識だ。ただし、たんなる「ケチ」と「節約」とは大違いで、前者はとことんケチであり、有望な投資先が目の前にあっても見逃してしまう。その一方で本当の節約家は無駄遣いをせずに貯めていたお金を、ここぞというときに生き金として一気に投じて大きなリターンを得ようとする。その点において、石橋を叩いても渡ろうとしない日本人とは一線を画す。
もし、先の武士の家計との共通点を強いて見出そうとするのなら、単収入だけに頼らずに、副収入を得ようとすることにあるのかもしれない。ユダヤ人はビジネスで稼いだ“労働所得”を投資に回して、値上がり益や配当などの“不労所得”を増やそうとする。お金がお金を生むサイクルを回していくことで大きな資産を効率よく築き上げられるからだ。一方の武士の場合、日々の生活費を補填するための副収入の確保という後ろ向きな性格のものであったのだが……。
ところで、日々の家計の管理はどうしているのだろう。家計簿を利用したりしているのか。この点についてホーさんは「確かに、米国でも本屋さんに行くと『Home Budget』という日本の家計簿と同じようなものを売っています。しかし、それを使っている話を聞いたことがほとんどありません。子どもの頃から金銭感覚を養ってきた彼らの頭のなかには家計の管理システムが出来上がっているのでしょう」と話す。