空気を変えた女性宰相

日本社会を支配しているのは、理屈や規則よりもその場の「空気」だと言われる。政治もその例外ではない。

2025年、確かに日本政治の「空気」は大きく変化した。憲政史上初めての女性の首相が誕生したことが最も大きいが、その女性・高市早苗氏の独特の雰囲気が作り出す「場の空気」が、永田町から広がり日本全体を覆ってしまったようだ。

新語・流行語大賞に高市首相の「働いて5連発」が選ばれ、バッグやボールペンなど首相が愛用する物を買って応援したいという「サナ活」という言葉も生まれた。内閣支持率も、70%を超えるような極めて高い水準が続いている。

最近出会った九州地方の自民党の地方議員がこんな風に言っていたのが印象に残った。「総裁選では実は他の人を応援したのだけど、高市さんになって今は良かったと思っています。ちょっと危なっかしいところもあるが、何しろ明るくて行動的。自民党の不振が続いた嫌な雰囲気を変えてくれるように頑張ってほしいと期待しています」

ただ、「高市推し」の空気が広がる一方で、マスコミや野党議員が高市政権を批判すると「早苗の敵は日本の敵」「首相の足を引っ張るのは反日サヨクか中国の回し者」といった罵詈雑言の書き込みがSNSなどネット上にあふれることになる。

衆院本会議で質問する立憲民主党の野田代表。奥右は高市首相=2025年11月4日午後
写真提供=共同通信社
衆院本会議で質問する立憲民主党の野田代表。奥右は高市首相=2025年11月4日午後

高市首相への批判には内容にかかわらず攻撃が殺到する変な空気まで広がっているのは心配だ。世の中が一つの空気に流されるだけだとロクなことが起きないのは歴史が証明済みだ。

高止まりの支持率

政権発足後2カ月の内閣支持率を見ると、朝日新聞の調査では68%(前月比-1ポイント)、産経新聞、75.9%(同+0.7ポイント)、日経新聞、75%(同±0ポイント)、毎日新聞は67%(同+2ポイント)そして読売新聞では73%(+1ポイント)とほぼ横ばいながら、高水準を維持している。

しかも読売新聞によれば、10月(発足直後)71%→11月72%→12月73%と3回連続で70%を超える水準で推移している。発足後2カ月、70%以上の水準を維持したのは、小泉純一郎内閣(87%→85%)と細川護熙内閣(72%→74%)の例があるだけだ。小泉内閣も細川内閣もその後数カ月は高支持率を維持していた。

女性初の首相というインパクトに高市首相の明るく積極的な姿勢、そして何より、積極的な経済政策を実現してくれるのではないか、という期待感が大きい。自らの国会答弁で中国との関係が険しくなっているが、それでも世論調査では「高市首相の姿勢を評価する」「答弁を撤回する必要はない」という声が多い。

発端は高市首相の不用意な答弁だったが、それに怒った中国側の威圧的な態度への反感が広がり、むしろ高市首相の追い風にもなっている。