<公共の場所における防犯カメラ網を世界でいち早く整備したイギリス。普及が進んだ背景には日本と共通するところがあるが、その運営方法はまるで異なる:小宮信夫>
監視カメラのモニター室
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かつて日本では防犯カメラに対する抵抗感が強く、設置は簡単ではないと言われていた。しかし、時代を経て、最近ではその状況が大きく変わり、設置が急速に進んでいる。

こうした動きについて、一般の人々がどのように思っているのか。Polimill株式会社が提供するSNS「Surfvote」が、「防犯カメラの増設に賛成か反対か?」とネット上で尋ねたことを踏まえ、その投票結果から考えてみたい。

この結果を見ると、多くの回答者が防犯カメラの設置に好意的である。プライバシーを理由に防犯カメラの設置に消極的な意見も多いと思われたが、意識が大きく変わったらしい。

もちろん、プライバシー、つまり私生活がみだりに公開されないことは保護されなければならないが、公共の場所ではプライバシーは限定的になる。なぜなら、そこでは容姿や行動がすでに公開されているからだ。プライバシーが制約される場所こそ、公共の場所と呼ばれるのにふさわしい。

日本と異なり、海外では、防犯カメラの設置が「犯罪機会論」を根拠に進められてきた。犯罪機会論とは、犯罪の動機を抱えた人が犯罪の機会に出会ったときに初めて犯罪は起こると考える立場だ。

動機があっても、犯行のコストやリスクが高くリターンが低ければ、犯罪は実行されないというわけだ。それはまるで、体にたまった静電気(動機)が、金属(機会)に近づくと、火花放電(犯罪)が起こるようなものである。

犯罪機会論では、犯罪が起きやすいのは「入りやすく見えにくい場所」であると主張する。そのため、防犯カメラの設置は、犯行が「見えやすい場所」にするための有効な手法と位置づけられている。つまり、防犯カメラという「ハイテクの目」が、人間の目に代わって犯罪者の行動を把握するというわけだ。

公共の場所における防犯カメラ網を世界でいち早く整備したのはイギリスだ。1985年に、海辺の街ボーンマスの歩道に49台の防犯カメラを設置したのが最初であるという。

もっとも、防犯カメラの普及が進んだのは、いわゆるバルガー事件(1993年)がきっかけだった。この事件では、10歳の少年2人が2歳の男の子ジェイムズ・バルガーをショッピング・センターで誘拐し、撲殺した後、線路上に放置した。

その際、少年が幼児を連れ去る様子を防犯カメラがとらえていたことが、事件解決に一役買った。そして、その映像がマスメディアによって繰り返し流されたため、イギリス人は防犯カメラに大きな期待を寄せるようになったのだ。

日本でも、長崎男児誘拐殺人事件(2003年)がきっかけで、防犯カメラの設置が加速した。この事件では、中学1年の男子生徒が、家電量販店のゲーム体験コーナーで男児に声をかけ、連れ出した後、7階建ての立体駐車場の屋上から突き落とした。この事件でも、繁華街を歩いている姿が防犯カメラにとらえられ、それが事件解決の決め手となった。

このように、イギリスと日本には、防犯カメラの普及については共通点があるが、その運営方法はまるで違う。例えば、日本ではリアルタイム・モニタリングをせず、録画のみ行うのが普通だ。つまり、日本のカメラの実体は「捜査カメラ」である。