人生を謳歌していた江戸時代の庶民は、かなりのミニマリスト。当然のようにリユースやリサイクルも行っていた。先人たちに倣って、シンプルな暮らしを始めるにはどうすればいいのか――。

なにより重要なのは「人と自分を比べない」

毎朝、畑が広がる郊外の風景を眺めながら通勤電車に揺られる生活を、約40年間続けました。仕事は楽しかったものの、成長することを強いられる現代生活に窮屈さを感じていた55歳のとき、川沿いの畑で作業をしている農家の人を電車の窓から見かけました。もともと歴史好きだった私は、ここで同じように畑を耕していた江戸時代の庶民たちのことをぼんやり考えるうち、当時の人々の楽しみとは何だったんだろう、とふと思ったのです。

興味を持ったのは、江戸という都市に住む庶民ではなく、江戸という時代を生きた庶民のこと。図書館に通うなどして、千葉県の農家で江戸時代、三代にわたって書かれた日記を見つけたり、民俗学者の聞き取り調査などの文献を紐解くうち、成長よりも安定を選んだ江戸時代の庶民の暮らしに、どんどんひかれていきました。定年後の自分の生き方のヒントにもなるのでは、という思いも感じたのです。

そうしてわかった当時の庶民の暮らしをざっと紹介していきましょう。農村の人たちは、自然の許す範囲でのみ生きていました。できるだけモノを買わず、持っているものを使い回す真のミニマリストです。今で言うリサイクルやリユースも普通。さらに手作りするものの材料には、身近にある天然素材を使い、お財布にも環境にもいいモノを使うことが一般的でした。

(構成=福光 恵)