「異次元」金融緩和の重い代償
ドル円レートの変動要因は無数あり、高市政権に対する疑念だけで動くものではないが、再び長期国債を中央銀行が無理やり買って、長期金利を抑え込むような素振りが見られれば、堰を切ったように円が一気に弱くなることは十分考えられる。
市場規律という節度ある世界では、国家財政の大幅な赤字は、国債増発によって国債価格の下落を引き起こし、結果として長期金利の上昇を招く。せっかく、財政支出で需要を無視やり押し上げても、金利が上昇してはむしろ民間投資に迷惑をかけてしまう。
これを「クラウディングアウト」というが、安倍政権は「異次元」だと言い張ってアベノミクスを実行した。金融市場は、「サナエノミクス」によって、またこのような状況を作り出し、市場原理を否定するのではないかと心配しているのだ。
積極財政派の人は、政府債務残高の対GDP比が先進国で突出していても問題ないと言う。しかし、たとえ日本の国内でそのような意見が多数派になったとしても、外国はそのようには考えてくれない。市場原理を否定して外国からも信頼されなくなった、「異次元」の過去が付きまとう。
それって、本当に物価高対策ですか?
財やサービスの価格を下げたいのなら、消費者が高いまま買えてしまう状況を後押しする政策は愚策だ。
緊急的な家計支援は必要だが、「これでお米を買ってください」とおこめ券を配ってもコメ価格が下がるわけでもなく、むしろ少し高くなってもいいやと思う消費者が出てくる。コメの価格を下げたいのなら、代替材の小麦製品を買いやすくして、米価を引きずり下ろすほうが得策だ。
ガソリン価格が高くなったのも、電気代やガス代が高くなったのも、円が異常に弱いからだ。ドル建てで取引される原油価格が下落しても、日本で燃料代の上昇が止まらなかったのは、円が弱すぎるからだ。
消費者物価で比べた場合のドル円の理論値は1ドル=108円、以前は卸売物価と呼んでいた企業物価で比べた場合の理論値は1ドル=93円なのだ。ドル円市場は市場であって理論値が「正しい」わけでもないものの、ガソリン価格をさらに3割程度は安くできる可能性を有している。

