「アベノミクスの再来」が危惧されている

高市氏が自民党総裁に選出された2025年10月4日、ドル円市場で円が一気に売られた。金融や経済学の教科書では、金利差が外為レートの決定要因のひとつとして紹介されるものの、市場を動かす国内外のディーラーがどう見通すか、それが大事なのだ。だからこそ市場の信認がもっとも重要だ。

2022年から円の弱さは、それまでの異常な量的金融緩和政策による日銀の当座預金残高の急拡大を下地に、米国の政策金利が上昇して日米金利差が拡大したことが要因だった。それは教科書的な解釈で十分説明できる。

しかし、今回、高市総理の誕生によってさらに円が一気に弱くなったのは、金利差ではなく、市場が危機感を持ったからだ。

【図表】ドル円レートと国債の利払い費
筆者作成

どんな危機感なのか。それは、高市政権がアベノミクスを推進した安倍政権の二の舞になるのではないかという危機感だ。

総理就任から円は一気に弱くなった

黒田元日銀総裁の時期には、国債発行残高の約半分を日本銀行が購入して長期金利を意図的に抑えることによって、マーケットメカニズムを完全否定してしまった。

本来、国債の発行残高が増大すると、需給バランスが崩れて国債価格は下落(国債利回りの上昇→長期金利の上昇)するが、国債残高は増えるのに長期金利は低下するという「奇妙で滑稽な」現象を作り出してしまった。

植田総裁になってからは、その奇妙で滑稽な現象を解消するという明確なスタンスを打ち出し、これからいよいよマーケットメカニズムを回復させるというメッセージを出せていたのに、高市政権がまたそれをひっくり返すのではないかと疑われ始めたのだ。

その疑念が払拭されず、円の信認が崩壊した場合、一体どこまで円は弱くなるのか。

高市氏が自民党総裁に決まった時に、1ドル=147円だったドル円レートは、わずか3日間で153円と6円も弱くなった。これは1日ごとに1.3%弱くなるということで、年利にすると500%近くになる。その後、総理就任後1カ月間で5%程度も弱くなった。

仮に高市総理になってからの円の弱さのペースが続けば、最悪の場合、2026年6月には1ドル=200円に、10月には1ドル=250円になってしまうのだ。