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自民党政調会長 高市早苗(たかいち・さなえ)
1961年、奈良県生まれ。神戸大学卒業後、松下政経塾修了後、米連邦議会の立法調査官、大学教員を経て、93年衆議院議員初当選。通産政務次官、経済産業副大臣を歴任。夫は自民党の山本拓衆院議員。


 

安倍晋三総理のタカ派仲間だ。2006年9月に発足した第1次安倍内閣で初入閣。「夢にまで見た」という復活安倍政権で、党の政調会長に抜擢された。しかし、その経歴は渡り鳥。1993年に無所属で初当選。自民党に接触していたが、当時は小沢一郎氏による政治改革の時代。流れに乗って、94年には、非自民の羽田孜内閣に入閣した柿澤弘治氏ら自民党離党組の新党に参加した。その後は小沢氏率いる新進党に合流。96年10月には新進党公認で再選。ところが、すでに自民党が政権復帰。この選挙で新進党が振るわないと判断したとたん離党。同年12月には自民党へ鞍替えした。

自民が駄目なら非自民。非自民の限界が見えたらまた自民。権力を嗅ぎわける力は天下一品だ。その嗅覚で安倍氏へとたどり着いた。自分の鼻が頼りなだけに、スタンドプレーも目立つ。村山富市政権で植民地支配と侵略を認め謝罪した、いわゆる村山談話を「しっくりこない」と批判。政府の方針に反したもので、他の幹部から注意された。またTPP交渉参加を巡る党内議論が始まったばかりの今年2月、「政府の専権事項」と口走り反発を呼んだ。

しかし、実は安倍総理が、本音では村山談話に批判的。TPPの判断も一任を取りつけたかった。高市発言はその心中を察した「露払い」といえる。原発問題でも露払いのつもりか「福島第一原発事故で死者は出ていない」と発言し再稼働を主張した。失言と批判され、直後に撤回、謝罪した。

ある政調幹部議員曰く「高市は安倍のポチ。幹部の器ではないが、今は支えるしかない」。政権に返り咲いたばかりの自民党にとって内紛はご法度だそうだ。高市氏の嗅覚、おまけに自民党の「大人の結束」。野党各党もこの2つには学ぶところがあるのでは。

(PANA=写真)
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