時事通信フォト=写真

みずほ銀行頭取 佐藤康博(さとう・やすひろ)
1952年生まれ。東大卒。76年旧日本興業銀行入行。旧みずほコーポレート銀行頭取などを経て2013年7月みずほ銀行頭取。みずほフィナンシャルグループ社長には2011年就任。


 

傘下の信販会社オリエントコーポレーションを通じて暴力団員に融資していた問題で、みずほ銀行が窮地に追い込まれた。10月4日に副頭取が会見し、問題融資の情報は法令順守担当の役員止まりと説明したが、わずか4日で内容を覆す。問題発覚時に頭取だった西堀利氏が融資を把握し、対応の指示を出していたほか、佐藤康博頭取や塚本隆史会長が出席した取締役会でも融資実態を記した資料が配られていた。資料が配布された取締役会などは4回も開かれ、出席役員は約20人に上る。経営陣が厳しい批判にさらされているのは当然である。

東日本大震災時に起こしたシステム障害をきっかけに、個人や中小企業を顧客にする旧みずほ銀行と大企業中心の旧みずほコーポレート銀行が合併したのは今年7月。旧日本興業銀行出身で、グループ持ち株会社社長の佐藤氏が新銀行の頭取を兼任した。金融界への歯に衣着せぬ批評など率直な物言いにマスコミでもファンは多かったが、問題公表後に佐藤氏が一部メディアだけに対応したことや、10月8日の頭取会見直前に日本経済新聞が同行からのリークとみられる内容を報じたことなどが引き金となり、「絶対にクビを取ってやる」(大手紙)と闘志を燃やす記者が増えた。

みずほ銀行は10月28日までの業務改善計画提出に合わせて関係者の処分を公表する。佐藤氏は辞任しないとの見方が優勢だが、第三者委員会の調査結果によっては、首脳陣の進退に発展する。その場合、多くの幹部が取締役会に出席して問題を知りうる立場にあったため、次の人間もいないのが実情だ。今後システム統合も控え、再びシステム障害を起こすことは絶対許されない状況だが、経営は五里霧中で先行きの不安は高まっている。

(時事通信フォト=写真)
【関連記事】
契約の切り札「反社会的勢力でない事の表明・確約書」とは
あの人が書き込みを……2ch情報流出の波紋
なぜ賄賂・談合は批判されてもなくならないのか
不祥事対策の会社法改正に2つの落とし穴
法令順守だけがコーポレートガバナンスの目的にあらず