外国の話のようでいて、自国の物語のようでもある

「アメリカ文学」には、米国外で生まれ、母語は英語ではなかったが、何らかの理由でアメリカに移住してから必要に迫られて英語を習得し、やがて英語で小説を書くようになり、高い評価を得るに至った亡命作家や移民作家、難民作家が多くいますが、春樹はそれとは違います。

彼は日本語を捨てずに英語(など)の翻訳を介して国際的な作家となり、ノーベル文学賞候補と目されるまでに至った。むろん、英語圏以外の作家の大半はそのようにして英語しか解さない読者と出会うしかないわけですが、春樹の場合は、そのスケールが違う。

彼が特殊(?)なのは、文学的な評価(というものが何なのかも考え出すとよくわからなくなってきますが)と、全世界的な読者の数、グローバルなベストセラー作家であるという事実が、いささか不釣り合いなまま結びついていることです。