ミシュラン社が公表したデータによると、

① 2005年、創業後105年を経て初めて海を超えた「ミシュランガイドニューヨーク版」を機に、現在、世界69エリアで刊行。掲載レストラン数は世界総計で約1万7000軒。2030年には、エリア数が100になる予定。

② 「フランス料理」から始まったガイドブックながら、現在では多種多彩なジャンルを包括する総合ガイドに。9月末に発表された「ミシュランガイド東京2026」では、フランス料理やイタリア料理はもちろん、日本料理にイノベーティブ、インド料理、うなぎ、居酒屋、おにぎりに蟹料理……と、37ジャンルを数えた。

③ 2000年代からは徐々にデジタル版・アプリ版にシフトしており、30カ国以上の覆面調査員(ミシュラン社では「インスペクター」と呼ばれる)が選定したホテルとレストランの情報を、世界25以上の言語で「無料提供」している。

④ 同社のSNSフォロワー数は700万人以上。アプリのアクティブユーザーは350万人以上おり、利用時にそのまま予約や利用者コミュニティーまで行き着くことができる。

……など、125年をかけた発展ぶりには目を見張る。

もう一度言うが、タイヤメーカーであるからこそ、主眼は「旅」であり、それが旅先での美食体験評価「ミシュランガイド」に繋がり、昨年からのホテル版「ミシュランキー」へと範囲が広がった形だ。

格付けよりも体験型ホテルを評価

前述の通り、すでにホテル業界には評価ランキングガイドがいくつもある。なぜミシュランまでもが? というのが筆者は疑問だった。が、昨今ホテル業界に参戦する新顔ランキングガイドは他にもあり、例えば2023年からは“食の世界のアカデミー賞”と呼ばれる「世界のベストレストラン50(英国)」が新たに「世界のベストホテル50」の発表を開始している。

個人的な感想となるが、「ミシュランキー」をはじめ、新規参入組のランキング結果を見る限り、ホテルの格付けをしているというよりは、「『いいホテル』っていっても多種多様。結局、個人的好みだよね」という姿勢が見え隠れする。また、独自のランキングガイドを発表することで自らの立ち位置を世界に表明したいというビジネス戦略も。要するに、“誰にとってもいいホテル”ではなく、“我々としてはここを評価したい”という企業姿勢が結果に現れていて、それが面白いと思うのだ。

授賞式の壇上で、受賞したホテリエに手渡されるのは、ホテルのエントランスなどに誇らしげに設置する、通称「ミシュランプレート」
筆者撮影
授賞式の壇上で、受賞したホテリエに手渡されるのは、ホテルのエントランスなどに誇らしげに設置する、通称「ミシュランプレート」。箱の裏には各国の言語で祝福の言葉が刷られていた。