女性が働きに出たら、誰が家事をするのか
日本的経営の下では、夫が稼ぎ手として、必要な家族賃金の大半を稼ぎ出し、育児・介護・家事労働は専業主婦たる妻が担うのが標準モデルでした。しかし女性も男性と同じように会社や企業で働くようになると、これまで女性が担っていた育児・介護・家事労働はどうなるのでしょうか。残念ながら、男女共同参画社会への道のりは遠いようです。社会学者の診断を見てみましょう。
まずアーリー・ホクシールドという社会学者が提唱するセカンドシフトという概念をご紹介します。共稼ぎの夫婦であっても、女性たちはファーストシフト(会社での業務)が終わったのちも、セカンドシフト(家事や子育て)に従事しなければならないという事態を表したものです。
セカンドシフトを解消するために男性が家事に取り組めばよい、ということになるのですが、ホクシールドはさらに、グローバル・ケア・チェーンという興味深い概念を提唱しています。これはサプライ・チェーンという経済学の用語から作られたものです。先進国の女性が外で働き始めると、家事や子育てなどのケア労働は、途上国出身の賃金の安い移民労働力(女性)に委ねられます。しかし、母国には当の移民たちの子どももいます。つまり、移民たちは自分の子どもを育てるために、比較的賃金の高い経済的に豊かな国の子どもを育てるという奇妙な関係が先進国と途上国の間で生じているのです。



