移民がやってくる国の「条件」とは

世界中でたくさんの人々が母国を離れ、移民として海外で働いています。日本でも移民という言葉は用いていませんが、たくさんの人が海外から訪れ仕事に従事しています。彼ら/彼女たちはなぜ海外で働くのでしょうか。

人間はもともと利益を求めて合理的な選択を行い、行動すると考えれば、海外で働く要因として次の二つがあげられます。一つは送り出す国の側の要因(プッシュ)であり、戦争・内戦や貧困などが考えられます。もう一つは受け入れる国の側の要因(プル)で、豊かな生活や国内の労働力不足があります。これらの要因から人の国際移動を説明するのがプッシュ=プル理論です。この理論が合理的な個人を出発点とするのに対して、個人を超えたシステムや制度の存在に注目する研究もあります。これがエスニック・ネットワーク論です。

個人を超えたエスニック・ネットワークがすでに存在し、その内部で生活環境、仕事、賃金の情報、生活する場所や働く場所まで提供されます。こうした同国人のネットワークが海外で働こうとする人びとを引き付けます。日本でも海外から来た人びとがたくさん生活する場所には、こうしたネットワークが存在しています。送り出す国の要因、受け入れる国の要因、そして二つの国をつなぐネットワークが形成されたとき、多くの人が移民となって国境を越えていくと考えられます。そして日本はすでに、これらの条件を満たしていると言えるでしょう。