日本企業に「中途採用」が少ないワケ

『大学4年間の社会学が10時間でざっと学べる』の第10章では、メンバーシップ型の雇用システム、長期安定雇用と年功賃金についてお話ししてきました。ここでは今まさに導入されようとしているジョブ型、同一労働・同一賃金というシステムについて考えてみましょう。

ジョブ型は雇用契約の際に職務内容と報酬があらかじめ決まっている雇用システムです。したがって、同じ組織の中で多くの職種を渡り歩いたり、勤続年数によって賃金が自動的に上昇することはありません。理論的にはバッファとして機能した正規雇用(社員)と非正規雇用(パート)の強い賃金差別も存在しません。

日本の組織では、あるポストに欠員が出た場合、組織内部の別のポストから人が移ってきます。つまり、大きな内部労働市場が存在し、そこから人材が採用、補充される形になります。それに対してジョブ型の雇用システムでは、労働市場は外部に開かれており(外部労働市場)、いわゆる中途採用が普通に見られます。ジョブ型、同一労働・同一賃金の下では転職、中途採用による不利はメンバーシップ型ほど大きくないと言えるでしょう。

そもそも年功賃金は歳月を重ね、経験を積むことによって潜在的能力が蓄積されるという哲学に立脚しています。グローバル化と情報化が進展する世界では、時間のかかる潜在的能力の蓄積よりも即戦力となる人材が優先されるのかもしれません。

【図表2】ジョブ型とメンバーシップ型雇用システムの違いは?
出所=『大学4年間の社会学が10時間でざっと学べる』(KADOKAWA)