しかし、自覚症状がないのに、早期に気づくにはどうすればいいのだろうか。キーワードは「口臭」だ。単刀直入に言ってしまえば、歯周病の人は「口が臭い」のである。
そのメカニズムを、口臭治療に詳しい西早稲田歯科の星野太一医師はこう話す。
「細菌の塊であるプラークは、口の中の老廃物を食べて生きています。細菌がタンパク質を分解するときに、メチルメルカプタン、ジメチルサルファイド、硫化水素といった化学物質を発生させますが、それが口臭の元になるんです」
臭いの元であるこれらの化学物質は歯周ポケットでつくられる。歯周ポケットが深ければ深いほど、プラークはどんどん増え、硫黄系のガスが多く生成される。そのガスが臭気となって、口臭になるのだ。それゆえ、口臭が気になるようになったら、歯周病を疑ってみたほうがいい。では一体どんな臭気なのか?
「硫黄系のガスなので、よく卵の腐ったような臭いと表現されます」
う~む、それは本人にとっても周囲にとってもかなりきつかろう。しかし「人間の鼻はずっと同じ臭いを嗅いでいると、だんだん鈍感になり、感じなくなってしまうことがあるんです。だから、本人は案外気づいていないことが多いのです」と星野医師。冒頭のAさんも高校時代、友人から「口が臭い」と言われていたが、「自分ではあまり気にならなかった」という。
本人が口臭に気がつかないのは、かなり困った問題である。特に男性の場合は深刻だと思われる。というのも、女性は男性の臭いに相当敏感だからだ。プレジデント誌の2013年4月29日号の「許せない『身だしなみ』ランキング」でも、口臭はワースト3に食い込んでいる。いくらイケメンだろうが仕事ができようが、口臭がすれば、女性からはただの「クサイ人」に降格されてしまう。営業や接客に携わる人であれば業務にも差し障るのではないか。