冒頭のAさんも自分の子供時代を振り返って、本人や親も歯周病に対する意識や知識が足りなかったことを悔やんでいた。宮下医師によると、こういった予防意識の差は、日本人の資質ともかかわりがあるようだ。

「スウェーデン人は何でも自己責任と考える人が多く、自立精神が旺盛。歯も歯医者にかかる前に自分でできることはやっておきたいと考え、予防に力を入れるのです。日本人は何かあったら医者に治してもらおうと考えがち。これが問題なんですね」

歯周病にかかりやすいタイプというのはいるのか、と宮下医師に尋ねてみたところ、

「ゆるい人です」

とズバリ一言。宮下医師の言う「ゆるい人」とは、口腔ケアに注意を払わないルーズな人という意味だろう。

歯周病の原因は喫煙習慣やかみ合わせ、遺伝的なもの、糖尿病の持病など、さまざまな修飾因子が考えられるが、その原因は細菌。口中が常に清潔に保てていない人は罹患率が高いし、治療してもその状態を維持できない。歯磨きや定期検診など、自分の努力次第で予防、改善できる部分が多い病気ではあるのだ。私事で恐縮だが、筆者はここ20年近く歯医者に行ったことがない。歯痛などのトラブルがなかったためだが、歯磨きも適当、フロスや歯間ブラシもほとんど使わない。お菓子も食べ放題。あれ、私って「ゆるい人」?

不安に駆られて歯科医院へ駆けこむ。検診の結果、歯周病はなく、虫歯も見つからなかった。しかし、年々リスクは高まっていくので、マメに検診を受けなければと心に誓った。

厚生労働省や日本歯科医師会が80歳で20本以上の歯を残そうという「8020運動」を推進している。20本以上の歯が残っている高齢者は活動的で、寝たきりになることも少ないといわれる。歯磨きなんて面倒と思うゆるい気持ちを今日から引き締め、しっかり磨こう。