本人が気づかなければ、家族や同僚や友人が伝えることになるが、相当気心が知れる友人であっても「あなたの口は臭い」とはなかなか言い出しにくい。なかには、家族に言われると反発する男性もいるようだ。

「そんなときは『あなた臭うわよ』ではなく、『臭いが普通ではない気がするので1度病院で診てもらったら』と言えば、聞き入れられるのではないでしょうか」と星野医師は頑固な男性に受診させるためのコツを話す。

もちろん口臭があるからといって必ずしも歯周病であるとは限らないが、慢性的な口臭の場合、確率はかなり高くなるという。1つの危険信号として覚えておこう。

重症患者への最新治療は?

慶應義塾大学医学部教授 
中川種昭氏

では、歯周病と診断されたらどんな治療を受けることになるのだろう。かつては「不治の病」とまでいわれた歯周病だが、現在、さまざまな治療法が生まれ、初期なら十分治癒が可能になった。初期治療はなんといっても、プラーク・コントロール。原因となる歯垢をきれいに取り除くことからはじまる。

「歯周病の前段階といえる歯肉炎なら、プラーク・コントロールで7~8割は治ります。自分で正しいブラッシングをして、歯の表面をプラークのない清潔な状態に保ち、さらにクリニックで、歯石の除去や歯周ポケットを専門的にクリーニングしてもらうのです。さらに咬合(かみ合わせ)を正していきます」(星野医師)

歯周病患者のうち8割は軽度。この段階なら自分のケア次第で、十分に治る可能性がある。一方、歯槽骨が溶けて、抜歯が必要なほどの重度の場合は、完治は難しいが、失われた歯周組織を再生する治療法がある。

「現在、再生治療の主なものは、GTR法とバイオ・リジェネレーション法です。GTR法は歯肉を切開し、歯周ポケットの歯石や細菌を取り除いたところを特殊な膜で覆い、歯槽骨や歯根膜を再生させる治療法。バイオ・リジェネレーション法は切開部分に、セメント質を形成するたんぱく質の1種の薬剤を塗布する方法です」(中川医師)